まだ温かい印刷物についての覚書｜食パンの耳について語りだしたら止まらなくなるので今度また別記事書きます

手作りの小冊子には趣がある。

例えば、内容をエクセルやワードで作り、A4コピー用紙にガーガー刷って、それを1冊1冊ホチキス留めした十数ページ程度の手作りテキスト。小さいセミナーで配られるような飾り気のない冊子。そういうものが、なんとなく好き。

フォントはデフォルトでもいいし、少しいじってあるのもいい。テキストエディタ慣れしていない人が試行錯誤した結果、行間や字間がやたら開いていてなんか全体的にスカスカしてるのもいい。英角ポップ体も……まあいい。手作業で段落を作ったため所々で行の頭が半角分ズレてるのもいい。一応言っておくが、小馬鹿にしているわけでは断じてない。私だってテキストエディタ系のソフトはメモ帳とワードパッドとオープンオフィスくらいしか使ったことがない。エクセル？使ったことない。

とにかく自分でもよく分からない理由で、「大学教授が講義当日の朝に慌てて作ったレジュメ」みたいな紙が好きなのだ。それを数枚束ねて、ホチキスで留めて、数人に配れば、「自分の書いた印刷物を世の中に出す」という偉業の一丁上がり。自分のこさえた文章を世の中に向かって発信するという点ではツイッターもこういったブログも変わらないが、紙に乗せて送り出すのはまた格別だと思う。手に取って、触れてもらえる。宗教勧誘の手作りパンフレットの有り難いような有り難くないような文章も、取り敢えず目を通すタイプ。

あと即売会でたまに売られている、やたらとニッチな分野を取り扱った学術系或いは実用系の、テキスト中心同人誌。そういうのも好き。コピー本だとなお良し。凄絶な熱意と独自の研究やフィールドワークから生まれた、アマチュアだからこそ作れる、アマチュアにしか作れないような本。実際購入したことはないのだが、そういう同人誌の宣伝ツイートを見るとあまりの「良さ」にとりあえずいいねしてしまう。よさみがすごい。そういう本ってコミケとか大規模な即売会でないとお目にかかれないイメージがあるのだが、そういう本専門の即売会ってのもあるのだろうか。一度行ってみたい。もしPDF販売で何か面白そうなものがあれば、購入して印刷してみたい。コピー機から出てきた直後の紙の温かさ、最高！刷りたてのあったかい紙を丁寧に丁寧にファイルに入れて持って帰って来たのに家に着いたら折れてる！最悪！

これを書いている今もそう、毎日パソコンやスマホと向き合い文章を拵えているわけだが、いつか、ペラペラのコピー本程度で構わないので、好きなものに関しての自分の文章を紙に篭めてみたい。印刷した紙の熱さはすぐに薄れてしまうが、熱意は残る。何年も後に、既にそんな本を作ったことも忘れているような頃合に、押入れから見つけ出したら、恥ずかしさにゴロンゴロンするだろう。中身を見ずにゴミ箱にぶち込みたいと思うだろう。それでも一応手に取ってみると、あの日、刷った直後の紙の熱が指先にジュワッと蘇って……やっぱり、ゴロンゴロンするだろう。

自分でそういう本を作るとしたら取り扱ってみたい題材、というのは既に頭の中に幾つか存在している。1番は「パンの耳」。市販の食パンの、パンの耳のレビュー本。私はとにかくパンの耳が好きだ。もちもちとした食感と香ばしい小麦の風味が口いっぱいに広がるのが好きで、パンの耳を食パンからペロンと引き剥がすあの瞬間が堪らなく好きで、もうパンの耳があれば取り敢えず他に何も要らないと思う。コーヒーは付けて欲しいけれど。

ちなみに今のところ自分の中で1番美味しいと思う市販のパン耳は、トップバリュベストプライスの「乳酸菌でしっとり やわらか仕込み」。安い食パンの耳は大抵ボソボソしているのだが、この「やらわか仕込み」はそのお手頃価格(98円+税)にも関わらずもっちりと歯ごたえがある。少し固めの耳。特に8枚切がお勧め。あの細い耳を咥えて端からモゾモゾ食べていると、例えるなら、あたりめをもちゃもちゃ噛んでいるときのような至福感がある。食感だけではなく味も香りも申し分なし。通りがかったパン屋さんから漂ってくるあの「パンが焼ける香り」が四辺のパン耳に凝縮されている。

 逆に美味しくないパン耳はセブンイレブンの「金の食パン」。食パンとしてふんわりやわらかいことは良いことなのだろうが、それ故にパン耳と中身の境目が非常に曖昧で、香ばしさもなく、パン耳愛好家としてはマイナスポイント。やわらかすぎてそもそもパンの耳がうまく剥がせない。4枚切しかないので1袋買ってもあっという間に食べきってしまう。質量は同じと分かっているがやはり6枚切か8枚切がいい。耳をペローンと出来る回数が多くなるからである。あとぶっちゃけ言えば、食パンとしてそもそも美味しくない。食感はボソボソしている。舌の上でサワサワするし、ちぎるとポロポロポロポロ溢れる。味は安い食パンと比べて甘いといえば甘いがまあ言うほど甘くもなく、しかし生クリームとか色々使ってるからかカロリーがすごい。高級食パンなのだが、何も良いところがない。以上。

 ちょっと食パン買ってこよ。