珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

機嫌の総量についての覚書|自分の機嫌と相手の機嫌を天秤に掛けるなど

「安定したメンタルで機嫌の良い状態を維持する」と「周囲の他人を大切にする」を両立するのはなかなか難しい。

安定したメンタルのためには、世の中の大抵の物事と他人のことは放り投げておくことが必須である。世の中の大抵の物事と他人は、自分を余計に惑わすように出来ている。今後の私の人生においてもうアナタ(物・事・人)と関わりあうことは一生ございません、と断定できるような存在でさえ、時に「ワタシ(物・事・人)はあなたにとって重要な存在なのです!」という顔でグイグイこちらの領域を侵食してくる。そういうものを全部切り捨てて初めて、安定したメンタルへの道が切り開けるのだ。逆にありとあらゆる物事、ありとあらゆる他人が、自分の世界の中に在る、かけがえのないものだと考えられる人は、その時点で聖者メンタルの域に達しているという点である意味安定している。自分に関わりのあるごく一部の(なるべく自分にとって心地の良い)物事と他人にのみ関心を寄せて、それ以外のものはばっさり無視してしまう。それが生きやすさへの第一歩。

あの人も、この人も、ずっと続く人も、今回限りの人も、みんなに優しくしようとして、みんな大切にしようとしたら、当然疲れる。疲れると、機嫌が悪くなる。機嫌が悪くなると、余計疲れる。ならばこの果てしなく壮大な(愚かな)優しさを捨ててしまおう。私の機嫌を取りに行こう!

ところがネガティブの権化である私はある日、こう考えた。逆説的に。

 

「私の機嫌を良くすることと、他人を大切にすることの両立は難しく」、

「他人を大切にするためには、私の機嫌を多少なり犠牲にする必要があり」、

「したがって私の機嫌が良い時は大抵、他人をないがしろにしている時だ」。

 

それを一度意識してしまったら、それが真であろうが偽であろうが関係ない。さあさあここからが地獄の始まりだ。自己の中で延々渦巻く疑念への着火が完了した。

今日は1日自分の機嫌が良かった。その原因と前後の出来事について思考してみる。何故機嫌が良かったのか?多分、変な客の相手をほとんどしなかったから。その分裏で力作業をしており、暑くて汗をだらだら流しながら重労働していたので、しんどかった事に変わりはないのだが、それでも機嫌が良かった。客の相手をほとんどしなかったから!客の相手はもう1人のバイトに任せて……任せ?任せるとは?私が呑気に裏で作業をしている間、もう1人に接客を任せていた。ええと、違うな。押し付けていた。変な客の相手をしたくなくて、力作業に逃げた。だから機嫌が良かった。押し付けられた相方の方は、もしかしたら変な客の相手ばかりさせられていたのかもしれない。私は機嫌が良くて、少しだけ饒舌になって、手が空いた時にちょこちょこ話しかけたりしていたが……相手はあの時少しむっつりしていなかっただろうか。そういえばいつもより口数が少なかった気がする。根暗に突然べらべらと話しかけられて引いていたのかも。ああどうして、どうしてあの時調子に乗ってアレコレ話しかけてしまったのだろうか。いつものように陰キャらしく顔色を伺いながらオドオドしていれば良かったんだ。なのに。ああ。私の機嫌が良かったのは、彼女に嫌な仕事を押し付けていたからで、彼女が普段より少し静かだったのは、私に嫌な仕事を押し付けられたからだ!

ネガティブ病は不治の病。思考の悪循環は死ぬまで続くのだろう。錆び付いて薄汚い環状パイプの中を、思考が延々と、ぐるぐる、ぐるぐる走り回っている。出口がないから、排泄できない。なんとか出口を作ろうとして、強引にパイプを捩じ切ってみる。その切り口から汚泥のような思考が一気にドロドロと流れ出して、次から次に、これまで溜め込んでいたものが一気に溢れて、身体の中まで真っ黒になる。

こうして「機嫌の良い自分」が怖くなった。ので、努めてストレスを招き入れている内に、招かなくてもストレスの方からやって来るようになった。その場のストレスを食べて食べて食べ尽くして、胃の中が真っ黒になった時、やっと安心出来るわけだ。

ある一定の空間、特に労働など一定のストレスに晒される場、における機嫌の総量は決まっていると思う。片方の機嫌が良い時は、きっともう片方の機嫌を貪り食っている。口では「このケーキ半分こね」と言いながら、3分の2と3分の1で切り分け、大きい方に自分が齧り付き、その上相手のクリームと苺を横取りして、砂糖で出来たサンタさんも横取りして、それを躊躇いもなく頭からバリバリ食って、それで「半分こ」した気分になっている。

 そんなものは絶対に美味しくない。

 かといって、相手にワンホール全部譲り渡して、残った空き箱をムシャムシャ食べていても、それはそれで美味しくないんだから、人生難しい。

 

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