珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

選択の海に溺れることについての覚書|過ぎたるは及ばざるが如し

現代人の臓腑に張り巡らされたネット回線

最近スマートフォンでやることが無くなりつつある。というよりも、インターネットでやることが無くなりつつある。いや違うな、インターネットでやれることが多すぎて今やることを選べなくなりつつある。手持ち無沙汰でスマホをを握ったはいいものの……私は一体この端末を用いて……何をすれば良いのだろう。ニュースサイトやまとめサイトをぼんやり眺めているだけで腹一杯どころか胸焼けがする。広大という言葉で片付けるにはあまりにも広大なインターネットの中から、私は私が快適であるために一体何を選べば良いのか。バイキングやビュッフェが楽しいのは自分の選択能力の範囲内で選択できるからであって、己の選択能力を遥かに超えた選択肢は却って苦痛をもたらすのである。30種類のケーキの中から好きなものを選ぶのは楽しいが、100万種類のケーキの中から好きなものを選ぶのは苦痛でしかなかろう。近頃の私とインターネットの関係は、神経質な人間と散らかった部屋の関係に似ている。一刻も早くここから出て行かねばならぬ気もするし、逆に踏み入って片付けねばならぬ気もする。それでも……それでもやっぱり、インターネットのことは嫌いになれない。我々は既に人類規模で「インターネットを嫌いになれない呪い」に罹っている。あなたがあなたの心臓のことを死ぬほど嫌っていたとしても、あなたはあなたの心臓をその場で放棄する訳にはいかないように。

はっけよい参った

 優柔不断は自身からも他人からも敬遠されがちな特性だ。自分が決められないのも辛いし、決められない人間を見ているのも辛い。私は合理主義で保守的な優柔不断という特にタチの悪いタイプであるので、とにかく選択能力が低い。今から手元にあるスマートフォンを用いて、消費する時間に見合うだけの有益なもの、それも極力刺激が少なく不快感を被らない安心なもの、それでいて気分転換になるもの、を獲得したい……一体どこに行けばいいんだろう。インターネットの仕事は24時間365日、我々の選択能力を遥かに超えた選択肢を提示し続けることである。果ての見えない広い広い海の水の1滴1滴が選択肢である。近頃よく本を読むようになったのは、「選択肢が多すぎて降参」のサイン。我々は常に選択を迫られている。あなたが今このブログを読んでいる(ありがとう!)のは、何らかの選択の結果たどり着いたからであって、何らかの選択次第では一生訪れることは無かっただろう。ここに限らず、またインターネットにも限らず、ありとあらゆるものとの出会い。人はこれをロマンチックに運命とか一期一会とか呼ぶのかもしれない。一方で必然と呼ぶ人もいるかもしれない。私はこれを選択と呼ぼう。恋人との選択の出会い。人間ただ生まれて、ただ生きて、ただ死ぬだけでも眩暈がするほど選択をしなければならないというのに、パソコン、あるいはスマートフォンと呼ばれるこの画面の向こうには、一体いくつ、一体いくつの選択肢があるんだ?何をしよう、何を見よう、どこへ行こう……ぐるぐるぐるぐる……

選択肢は下水道にでも流してしまえ

 抽象的で感覚的で主観的でとっ散らかってて収集つかなくなるのは当ブログではいつものことだが、散らかしついでにもう少し散らかしておきたい。何故近頃インターネットをぷらぷらすることに関心を失いつつあるのか。1つは前述の通り選択肢が多すぎてどこで何をすりゃいいか分からないから。選択に疲れてしまったから。それとは別にもう1つあって、実に単純、自分の頭の中であれこれ考えるのにハマっていてその行為にインターネットは全く必要ないからである。最近のトレンド、自分の頭の中であれこれ考えること。趣味としてはコスパ最強。時々本など読み、その後自分の頭の中であれこれ考えることを楽しんでいるうちは、インターネットも無用の長物というわけだ。おせっかい焼きのインターネットが横から提示してくる選択肢を全てなぎ払い、自分の殻に篭って思索に耽る。この素晴らしい特権を持っているのはかつての貴族か暇人くらいである。右手があれば彼女なんかいなくてもいいからね。しょうがないね。

「いっちょここらで死んどくか」

人生は流しそうめんのように流れているように見えて、無数の、それこそ無数の選択エネルギーに突き動かされている。例えば、私は今この瞬間に「ブログを書くことを止めて死を選ぶ」という行為を取ることだって出来る。やらないけど。さて直前の句点を打ち終わった、今この瞬間にも選択肢はある。今も。今も。今も、私は「ブログを書くことを止めて死を選ぶ」ことが出来るのだ。そして、今も。今も。今も。

 

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