珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

他人への期待と世の中を思い通りに動かす方法についての覚書|ブログの更新頻度には期待しないでください

私に春がやって来た!

おかしい。近頃の自分は客に対して妙に、こう……優しい。接客業の癖に客に優しいなんて本当にどうかしている。彼らの財布から出た金でメシを食っている身分でこんなことを言うのもアレだが、時には何をどう間違えたらこんな酷い人間が出来上がるのかというくらい酷い連中がやってきて、私は一ヶ月に何人の客を出禁にし、一ヶ月に何度警察を呼べば良いのかと頭を抱え、人間の善性というものを疑い、良識を疑い、理性を疑い、分別を疑い、脳内では性善説を唱える孟子を羽交い締めにし、隣人愛を説くキリストを投げ飛ばしながら過ごしていた矢先の、思いがけない穏やかな春の陽気。そう、これは恐らくきっと、長く厳しい冬を耐え忍んだのちに、暖かな春の風に乗ってやってくるこの世で最も素晴らしい贈り物……完全なる諦めの境地である。

ちょっと男子~食い逃げするのやめなよ~

疲れすぎて疲れを感じなくなったとか、腹が減りすぎて空腹を感じなくなったとかいう具合に、怒りすぎて怒りを感じなくなったのだろう。私は人の上に立つことには無縁のカースト最底辺人間だが、性分がどうにも学級委員長気質なのは自分で大いに認めるところである。理不尽なことが許せないとか正義感が強いと言うと聞こえがいいが、要は融通が利かない世渡り下手の典型だ。そして今までは自分の理解を超えた人間に対してやり場のない怒りを燃やし余計なストレスばかり抱え込んできたのだが、その火がフッと燃え尽きた。これはきっと幸せなことなのだと思う。私は言うなればクラスの問題児共を一喝するどころか逆に言い負かされて半べそ掻いているような無能学級委員長だったのだが、それが今になってようやっと委員長の職を解かれたというわけだ。来期は飼育委員やります。

みんなだいすきディストピア

他人に怒りを覚えるのは自分が他人に対して勝手に期待し(過ぎ)ているからだとしばしば言われるが、他人への期待を捨て去った人間がそこかしこに増殖されたらたまったもんじゃないと思う。あらゆる小さな問題は大目に見られ、あらゆる大きな問題は機械的に処理され、寛容という仮面を被った無秩序が跋扈し、鷹揚という着ぐるみを着た無関心がそこら中を歩き回る。学級委員長という職も消えるだろう。人はみな自らの内にのみ責任を求めだし、必死になって自分の内側をかき回しているうちにうっかり自分の心臓をえぐり出して死んでしまうのだ。ヒエー。狂った理性が倫理観を滅ぼしていく様はディストピア感があってなかなか興奮するが、そんなんはB級映画の範疇で勘弁願いたい。

世の中を自分の期待通りに動かすには自分の期待そのものを変質させること

自分に都合の良いように他人に期待するから怒りが生まれるのであれば、自分に都合の悪いことだけ他人に期待しておけばいいのだろうか。人は「誰それに対しては期待してないよ」と言うが、実際それは「期待がゼロである」というよりも、「負の事象を期待している」と表現したほうが正しいと思う。「あいつが皿洗いをすることを期待していない」と言うときは、「皿洗いをしないことを期待している」、もっと言えば「自分の期待はいつも正当であることの証明と相手に文句を言う口実欲しさにここでは皿洗いをしないことを期待している」のであって、期待通りに事が進めば「ほらやっぱり自分の期待は正しかった、あいつはクソ」となるわけだ。ここで興味深いのは、もし相手が自分の期待を裏切って皿洗いを始めたとしても、「なんで俺の期待を裏切って皿洗いをやるんだ!」と本気で怒り出す人はそうそういないということだ。「なんだ、たまにはやるじゃん」とちょっぴり感心するだけである。先程はああ言っておきながら、本心では「でもやっぱり皿洗いしてくれたらな~~してくれたら嬉しいのにな~~」と正の期待を抱いていた証拠ですね。いかなる時でも正の期待を完全に捨てきれない人間ちゃんはカワイイ。とはいえ基本的に良い期待であれ悪い期待であれ、自分の期待が裏切られるのは気持ち良いものではないので、自分の期待通りに事が進むよう「あいつが皿洗いをしないことを期待している」「よしんば皿洗いを始めたとしても皿を割ることを期待している」と都合良く期待の性質を変化させておく。すると世の中全部自分の期待通りだ。やったね。

自分の期待に応えたつもり

期待を裏切られ続けて疲弊するよりも、期待通りに物事が進んで「やっぱりね」と言う方が良い。「皿洗いしてくれると期待してたのに……」と落胆するよりも、「自分の期待通り皿洗いしてくれなかった、やっぱりね」と皮肉る方が自己肯定の足しになるからだ。この記事の前半は一昨日に書いたもので今日となっては自分が何を書きたかったのか分からず適当に話をくっつけたのだけど、一昨日の自分の期待に添えられたのであれば幸いである。

 

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