「余裕」を求めて迷走する1人の書き手とちくわの種についての覚書｜無ばかりの生活に終止符を打ちたい
始まりの始まりはどこ
余裕があるから丁寧な暮らしが出来るのか、丁寧な暮らしをしているから余裕が生まれるのか。どちらが正解であろうと、或いはどちらも正解でなかろうと、それ自体は大した問題ではない。問題は……そう問題は、最初の「余裕」、最初の「丁寧な暮らし」をどこから掘り出してくれば良いのかということである。現状の生活を必死に掘ってはみるものの、「余裕」もしくは「丁寧な暮らし」の始まりが見つからない。始まりさえ見つかれば、あとは芋づる式にそれらが地表に顔を出して、最終的に丸々と太った芋のような「余裕」や「丁寧な暮らし」が収穫できる手筈なのだ。だが見つからない。ウウ。私の「余裕」や「丁寧な暮らし」の始まりはどこに埋まっているの。ありそうで無いものを毎日必死に探している。あたかも始まりが存在しない不思議なセロハンテープをぐるぐるぐるぐる回転させながら、あるはずのない最初の切れ目を延々探すが如く。
家電でも何でも壊れる時は一斉に壊れるもんだ
ただ、何か簡単なきっかけがあれば良いのだということは分かる。「余裕」へ至るきっかけ、「丁寧な暮らし」を志すきっかけが。きっかけというのは言い換えれば自分を動かす何か。その自分を動かす何かが私を突っついてさえくれれば……おっと自分を動かす何かが動作不良で停止しているではないか。そうなると「自分を動かす何か」を動かす何かが必要ではないか？「自分を動かす何か」を動かす何かが……アッこいつも経年劣化で停止してやがる！こうなったら「『自分を動かす何か』を動かす何か」を動かす何かを大至急……アッ耐用年数経過で故障！メーカー修理の対象外！！畜生め！！！
なんでも頼れるって言ったよね？
「余裕」の始まりは見つからず、「丁寧な暮らし」の始まりも見つからず、それらへ至る道であるはずの「きっかけ＝自分を動かす何か」さえ見つからず、然らばここには何もない、無ばかりがぼうぼうと生い茂るゼロの庭園である。無の種を蒔き、無の芽が出て、無の花が咲いて、無の実が生って、また無の種が落ちる。こちらの庭園、1年を通して時期を問わず「無」が見頃となっております。特に今の季節は 無色 とりどりの花をお楽しみ頂けます。ただし皆様、観賞の際はくれぐれも近づきすぎないようお気をつけください。ぱくりと食われますよ。なんて呑気なことも言っていられないので、なんとかしてここに何かを、何かを放り込んで、無ではないものを生やさねばならぬのだ。無ではないものの種を。コメリかパワーにでも行けばいいのか？
余裕の無さから生まれる「余裕」もある(かもしれない)
ちくわしか持ってねえ人は幸いだ。その手の中にちくわがあるのだから。ちくわさえ持ってねえ人は……ちくわの種を蒔くしかあるまいよ。無の大地を前にして何もしないよりは、ちくわの種だろうがかまぼこの種だろうが蒔いた方が何倍もマシなのだ。まだ手に入ってもいないトマトやきゅうりの種を蒔くことばかり頭の中で考えて何一つ行動しないよりも、懐にあるちくわの種を蒔いたほうがずっと有意義だ。意味があるのか分からない種でも蒔こう。意味の分からない種でも蒔こう。何かの種を持っているなら、持っているものを全て蒔こう。何も持っていないのなら、その辺に落ちてる種っぽいものを拾って片っ端から蒔いていこう。だってそれしか出来ないのだから。今の自分がやるべきことは以下の4点である。①無の大地に肥やしを撒くこと。②無の大地に蒔く種を身近なところから探すこと。③探した種を蒔くこと。④蒔いた種から芽が出て花が咲いて実が生って再び種が落ちるまで面倒を見ること。肥やし、それ即ち健やかな心身である。種、それ即ち何かしらの興味関心である。芽花実、それ即ち何かしらの興味関心が行き着くところである。落ちた種、それ即ち新たな興味関心である。何かしらの興味関心を絶やさないように、生きる口実を絶やさないように、ただ生きるために生きるのではなくて、何かのために生きられるように。「余裕」が欲しけりゃ「余裕」を捨てろ。 そこに無い「余裕」を得るためにそこに無いはずの「余裕」をかなぐり捨てるというのも妙な話だけれど。無い袖は振れなくても、無い「余裕」は捨てられるんだよなあ。多分。
おまけ：私がかろうじて持っている種の一覧
・コーヒー(おいしいしオシャレなので)
・水彩画、油絵(学生時代好きだったので)
・哲学(プラトンが最高に面白いので)
・ファッション(自分で言うのも何だけどセンスはあるとおもう)
・日本酒/焼酎(うまいので)
・文を書くこと(なんかこうワンチャンありそうなので)
