珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

灰汁がたっぷり染みたアツアツの私についての覚書|煮込み料理を自称するのも烏滸がましいなにか

あく【灰=汁】

1 植物を焼いた灰を水に浸して得る上澄み液。アルカリ性を示し、古来、洗剤・漂白剤として、また染色などに用いる。
2 山菜や野草などに含まれる、渋み・えぐみなどのもとになる成分。「ウドの灰汁を抜く」
3 肉などを煮たときに、煮汁の表面に浮き出る白く濁ったもの。「スープの灰汁をすくい取る」
4 独特のしつこさや粘っこさなどがあって、なじみにくい個性。「灰汁の強い人」
 

 ウーン

 

ほら私って何かにつけて難癖つけるタイプのブロガーだから

自分、最近ちょっと灰汁が効いてきたのでは?唐突にそんなことを考えた。ああいや、ちょっと待って頂きたい、私が今「私って灰汁の効いた人間なのでは」と言ったのを、「私ってサバサバ系だから」や「性格悪いってよく言われる(笑)」や「あーごめん私思ったことをすぐ口に出しちゃうタイプなんだよね」などの台詞に代表される 例のアレ・・・・ とは同類にしないよう読者諸賢には強くお願いしたい。すなわち、「灰汁が効いている」ということを己がひとつの個性として見做しているわけでは決してないということを重々ご承知願いたい。彼ら彼女らが胸張ってひけらかしているのは己の個性ではなく単なる恥部である。こちらが返すべきセリフは「そうなんだ、恥ずかしいね」で十分だろう。話を戻すが、そもそも私は灰汁自体を人の個性だと思っていない。デジタル大辞泉には悪いが、項目4の「独特のしつこさや粘っこさなどがあって、なじみにくい個性という部分に少々の難癖を付けさせて頂こうと思う。

 

絞ればもっと出る

項目3の言葉をまるっと借りるならば、人間などを煮たときに、煮汁の表面に浮き出る白く濁ったものが、灰汁なのだろう。もっと言えば、人間などを煮たときに、個性の表面に浮き出るどす黒く濁ったものが、人間の灰汁なのだろう。個性の上澄み液にして、取り除かれるべきところ。生まれたての赤ちゃんからは、人間の灰汁は出てこない。何故なら、まだ煮られていないから。人間は、1日1日を積み重ねるごとに少しずつ煮られていく。そうして少しずつ灰汁が浮いてくる。少しずつ。もちろん、成長して年齢を重ねた人間が必ずしも灰汁を浮かばせているわけではない。生じる灰汁の量には個人差があるし、浮かんでしまった灰汁もきちんと掬い取ることが出来るからだ。本人にその気さえあれば。

 

欠点は人の個性になり得る一方で後天的な悪徳を個性と呼ばせるのは非常に図々しいなあと思うのだが欠点と悪徳は時に紙一重なので判断が難しい

たけのこの灰汁を指して「これはたけのこです」と言う人は恐らくいないだろうし、牛肉の灰汁を指して「これは牛肉です」と言う人もきっといないだろう。そういうことにしておいてほしい。一方で、個性の灰汁を指して「これは個性です」と言う人は大勢いるのだ。これは単にその人が灰汁を灰汁と見做していないのが主な原因だろうが、徳を帯びた個性と悪徳を帯びた個性を見分けるのはそんなに難しいことだろうか。いや……難しいな。ウン、難しいんだ。最近またアリストテレス『ニコマコス倫理学を読み返しているが、アリストテレス先生もその辺りに関して非常に苦心している箇所が見受けられる。例えば、「徳の一種である『勇敢』は怯懦な人からすれば無謀であり、逆に無謀な人からすれば怯懦である」という旨の記述。アリストテレス先生の苦心を超ざっくりまとめるなら、「通常徳に適ってよしとされることも人や状況によってはあしとされることが大いにありうるしその逆も然りであってそれらのちょうど真ん中を狙い撃つのってほんと困難」ということだ。ウンウン。めっちゃ分かる。……で、何の話でしたっけ?

 

2000円超えの灰汁取り器があるらしい

ああそう、最近灰汁が効いてきたなって話だった。灰汁が浮かんできたというよりは、効いてきたのだ。じわじわと。長い間、掬って取り除くことを怠った灰汁が、私の中に逆戻りして、私の中にどんどん染み込んでいく。これまでは問題なく抑え込めていた自分の欠点を突然人前でポロリしてしまったり、ちゃんと気にするようにしていたことが段々気にならなくなってきたり、大事なことを「まあいっか」で済ませたかと思えばほんの些細なことにいちいちこだわりだしたり。これが悪い歳の取り方ってやつなのだろうか。27年間灰汁取りをきちんとやってこなかったツケが、今になってどんどん押し寄せている。

 

竹皮に包まれて蒸されたらきもちよさそう

鹿児島の郷土菓子に、「灰汁巻き」というものがあるらしい。灰汁に漬けたもち米を竹皮で包んで蒸したものだそうだ。ここでいう灰汁はもちろんたけのこや牛肉から浮かんでくる灰汁ではなくて、植物の灰を水に漬けて作った、本来の灰汁のことである。これだけ聞いてもまるで味の想像が出来ないが、なるほど、そういう灰汁の使い方もあるのだな。

 

 

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