詠めって言われたから詠んだ覚書｜一句詠みの強要は危険なので絶対にやめましょう

今週のお題「575」ならびに〆の文言「それでは、ここで一句！」について一言

風流な無茶振りやめろ

それ一句！一句！

いや待てよ。サラリーマン川柳やオタク川柳があるのなら、フリーター川柳だって有ってもいいはずだ。何かしらそういう企画が存在しないかと思い「フリーター川柳」で検索をかけたのだが、川柳投稿サイトのジャンル内に「フリーター川柳」があったくらいで、独立した企画としては存在しないようだ。投稿数55件というのも妙なリアルさがある。検索結果をスクロールすると、4件目には既にミニストップ越谷川柳店アルバイト募集のページが現れるところがまた哀愁を誘う。もう全然575関係ないですやん。確かに私は現在フリーターだし、「フリーター歓迎」の文言は死ぬほどありがたいのだが、今はバイトを探してるんじゃなくて、川柳の企画を探してるんだ。まあ確かに、フリーター川柳ってのは企画としてちとパンチが足りないと思う。イジりどころもなければアゲ奉りどころもない、要は中途半端なのだ。ブラック企業川柳が大きな企画として存在しているのがいい例だな。ちなみにミニストップ越谷川柳店、タウンワークとフロムエーに掲出してあった分に関しては募集終了しているので気をつけよう。

やりまーす

だがまあたまには真剣にはてなのお題と向き合ってみるのもよかろう。いつも揚げ足取りしかしてないわけだから。元々こういう……なんていうの……リズミカルな文章？を考えるのは好きなのだ。よーし考えちゃうぞー

泡沫うたかたの　浮腫うき足立ちぬ　静寂しじまかな

句意：勤務中、これといって何事もなく平和に時間が過ぎていくと、却って恐ろしい気分になり落ち着かなくなる。週6フルタイム立ち仕事でパンパンに浮腫んだ足もつま先立ちするくらいに。まあそんな平和な時間も儚く消え去る一抹の泡に過ぎないのだろう。きっと明日にはまた何事か起きるさ。

解説：何事か起きている間よりも、何事も起きていない間の方がおっかないことってあるよね。ちなみに「うたかたの」は「浮き(憂き)」や「消ゆ」の枕詞である。「浮腫うき」の枕詞ではない。そもそも季語が入ってないんだけど俳句とも川柳とも言ってないからセーフ。

一陽に　なごり雪散る　明けの空

句意：1万5000円返して

解説：暇つぶしに計算したところによると、もしも1日3分の残業を1年間続けたならば残業代が約1万5000円になるらしい。ふーん。業務の引き継ぎとか諸々の作業があるから毎日3分くらいは勤怠押してからも普通に残ってるし、でも3分なんて茶ァ飲みながらウダウダしてたら勝手に過ぎる程度の些細な時間であって、別にどうってことないけれど、もしそれを勤務時間に計上してたら年間1万5000円になったんだ。ふーん。私の1万5000円は夜勤明けの空に消えてしまったのだなあ。

……ちなみにもう少し真面目に解説すると、「一陽いちよう」は冬が終わって春になること。もちろん、樋口一葉とかかっている。それで、「なごり雪」は春になっても降る雪のこと。「雪散ゆきちる」はご存知、福沢諭吉とかかっている。それがほろほろと明けの空に散っていく。私の樋口一葉と福沢諭吉が儚く散っていく。(私が一方的に)なごりを惜しむかのように。

十六夜いざよいの　おかしき月見　クソ喰らえ

句意：メインのバイト先には週4回、月換算でだいたい16回夜勤で入っている。夜な夜な、月の狂気に当てられたのかと言いたくなるようなお客様がご来店して暴れているのを眺めているうちに、だんだん面白可笑しい気持ちがこみ上げてきて、時には本当にくふくふと笑ってしまうあたり、私も月の狂気に当てられたひとりなのかもしれないなあ。クソ喰らえ、の意。

解説：『源氏物語』第六帖『末摘花すえつむはな』の「十六夜の月おかしきほどにおはしたり」という一文の悪質なパクリ。もちろん『末摘花』における「おかしき」は「可笑しい」という意味ではなく「美しい」という意味であり、あと言うまでもなく、この文章自体夜勤バイトともクソ客とも全く関係がない。また、昔の西洋においては月が人間の狂気を呼び起こすとされ、「ルナティック(lunatic)＝狂気の、狂った」という単語が生まれたのは皆様ご存知のとおり。そしてメインのバイト先にルナティックなお客様が毎晩のようにご来店なさるのは散々当ブログで述べてきたとおりである。「十六夜・・・のおかしき月見」とはすなわち、「あたかも月に当てられたが如くトチ狂った方々を引きつった笑いと共に眺めながら過ごす、月に十六・・回の夜・勤」のことである。これをものしたのが8月16日だったら尚よかった。