珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

仮定の仮定乗と人生の計算式についての覚書|undefined

さじょうのさじょうはさじょうのにじょう

昨今の世界的混乱の中で再確認したことが1つだけある。人は誰もが仮定の上に仮定を積み上げながら人生のプランを練り、恐る恐る人生を進めているのであるが、そうしたやり方の中にこそ我々の限界が如実に現れているなあ、ということ。それは砂上の楼閣ならぬ砂上の砂城とでも言おうか。少し具体的に述べるとこうだ。明日もいつもの地球があって、明日もいつもの日本があり、明日もいつもの街があって、明日もいつもの村があり、明日もいつもの仕事があって、明日もいつもの住まいがあり、明日もいつもの食うものがあって、明日もいつもの着るものがあり、明日もいつもの家族がいて、明日もいつもの友人がおり、明日もいつもの恋人がいて、明日もいつもの手足が動き、明日もいつもの左手があって、明日もいつもの右足があると思っている。これらは所詮全て儚い仮定であること、誰もが頭のどこかでは理解していても、まさかそれが明日やって来るなんて思いもしなかっただろう。ところが、それは案外早くにやって来たというわけだ。「いつかはきっと来るだろう、けれども明日には来ないだろう」。人間ちゃんの千里眼、ガバガバすぎませんかね。

 

何故人間はこれほど賢いにも関わらずいつもびっくりしてばかりなのか?

70億人が寄ってたかってまさかそんなことは起こるまい』の上に仮定事項ばかりを積み上げながら暮らしているからですね。そして、我々にはそうする以外に方法がないからですね。崩れやすいモノの上に崩れやすいモノを積んではならない。我々にはもっともっと強固な土台と堅牢な城が必要だ。『絶対にそんなことは起こらない』の上に確定事項を積み上げなければ。いつまで経っても我々にそれらが与えられないのは、神様の懐にしまいっぱなしになっているからに違いない。あのー神様ちょっと、そこでジャンプしてもらっていいですか?

 

私、あと4年3ヶ月今の環境で働いたら転職するんだ……

計算によると、あと4年3ヶ月。私があと4年3ヶ月今のバイトを続けたら、貯金が目標額に到達するらしい。このようにして、人はしばしば電卓で人生を計算する。さて、この単純計算は一体いくつの仮定の上に積み上げられたいくつの仮定であろうか。無数の仮定のうち何を土台とするかは非常に悩みどころであるが、「私が健康であること」「バイト先が存続していること」「私の雇用が継続していること」、この3点はひとまず押さえておくべきだろう。先ほど弾いた電卓には、当然この仮定は入力していない。入力出来ない。入力しようがない。おやおや、私は人生における重大なことを計算していたはずなのに、こんなに大事な要素を入力せずに答えを求めようだなんて。袋に入った飴玉を何人かで分けるとひとり何個になるかの計算をしようとして、飴玉の数もそこにいる頭数も入力せずに答えを求めんとするようなものだな。月収がいくらであるとか、そのうち毎月いくらずつ貯金するとか、1年が12ヶ月であるとか、そんな些細な数字はどうでもいい。貯金額をちょろまかそうが1年を13ヶ月としようがそんなことはどうだっていい。【「私が健康であること」+「バイト先が存続していること」+「私の雇用が継続していること」】という式を、【「目標までに必要な金額」÷(「毎月の貯金額」×「12ヶ月」)】という式にどう組み入れるか。これは人生を賭けた難問ですぞ。

 

やっぱりこれからの時代は計算力ですよ

仮に、私が明日健康を失い、明日バイト先が潰れ、それに伴って私の雇用が断絶したとしよう。ウーン、こんな状態でどうやって貯金が目標金額に到達するまでにかかる時間を計算しろというのだ。それどころか目標金額から遠ざかっていくばかりじゃないか。でも、有り得ないことじゃあない。決して。明日そうなってもおかしくない。もし明日はそうならなくても、明後日にはそうなるかもしれない。このようにして、毎日最悪の事態を想定しながら人生を小刻みに計算していけば、いざ大変なことが起こったときも冷静に対処できるかもしれない。けれども悲しいかな、ここにも人間の限界があって、こんなことを毎日毎日計算しながら生きていけるほど、人間は根っからの計算屋ではないのである。明日服も食も家も失ったらとか、明日全財産が盗まれたらとか、明日職場が爆発四散したらとか、明日両手足が吹っ飛んだらとか、明日世界規模でのパンデミックが起こったらとか、そんなことを毎日毎日計算していたら頭おかしなるで。

 

はぐろさんちの明日のごはん

 さしあたって、明日のお財布の中身と明日の冷蔵庫の中身くらいが計算できればそれでいいと思います。それさえも所詮は仮定にすぎないことだけど。お金とごはんは大切だから。明日もおいしいごはんが食べられるといいね。

 

 

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