珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

足りなさすぎる0と足りすぎている0についての覚書|無と0と「 」の人類悪三兄弟

いいのかな

視聴でポイントが貰える広告動画を見ていたら、「累計売上2200本突破!」というコピーがどーんと出てきた。ウン……ウン?少なくない?それは化粧品の広告だったのだが、よく見かける非常にうさんくさいシミ消し美容液などではなく、私が小学生くらいの頃からあるそこそこ名の知られたブランドの商品で、実際調べてみたところ20年近く続いている結構なロングセラーであった。エッ、20年で2200本?少なくない?単純計算しても1年で100本……100本!?3日に1本?少なくない?ファンケルのマイルドクレンジングオイルなんか「3秒に1本売れている」って触れ込みで売ってるのに。「259,000秒に1本売れている」って言われても、マイルドクレンジングオイルの足元にも及ばないどころか、同じ土俵に立つ前から塵芥となって消し飛ぶレベルだぞ。なんせ86400倍の戦力差があるんだから。あのー、0、明らかに足りてなくない?

 

よくなさそう

私にも足りてない0はいっぱいあると思う。1番わかりやすいのはなんといっても収入ですね。流石に月収や年収の0が足りてないとまでは言わないが、生涯収入の0はこの先必ず足りなくなることだろう。かなしいなあ。あと、ボーナスという側面だけ見れば、正社員として働いている人たちと比較して0が2個くらい足りないかもしれない。盆休みと年末年始の出勤手当として会社からほんのささやかなお小遣いが出るくらいであるから。

 

●絶対にタイムパラドックスを起こしたい私vs絶対にタイムパラドックスが起こらない私○

一方で、足りている0もいっぱいあると思う。0しかないものがいっぱいあると思う。ありすぎて列挙しきれないくらいにはあると思う。例えばそうだなあ、職歴の0。持っている免許・資格の0。学生時代に頑張ったことの0。御社が私を採用するメリットの0。だめだこりゃ。とはいえ、私は「ちゃんと卒業さえしていればきっとどこかしらに就職できただろうに」と後悔するようなことが全くなくて、どんなに都合よく想像を巡らしても、想像の中の私はどこにも就職できないし、それ以前に卒業さえすることさえままならない。ぴえん。想像の中なのに。想像の中の自分にくらい、ちゃんと卒業させてやって、ちゃんと就職させてやりたいのに。だからこそ、「今ならタダで大学2年の頃まで戻れますよ、試してみませんか」などと言われても、丁重にお断りするだろう。親には申し訳ないが、後悔の0というものも、足りすぎているくらい足りているのだ。

 

零万長者

他にはそうだな、やる気の0、根性の0、才能の0、人望の0、信用の0、計画性の0、いくら書いても書き尽くせないくらい、たくさんの0が足りている。これらの0をちぎって預金残高のうしろに付け足してやりたい。それで私は億万長者だ。どうせ何もないのだから、預金残高くらいたくさんあってもいいじゃない。なけなしの0さえもむしり取られたこれらはそのあと一体何処へ行くのだろうね。まあ私の知ったことではないけれど。何処へでも行くといいさ。あんまり他人様に迷惑かけなさんなよ。

 

   について考え始めるとキリが  んだよなあ

とかナントカ言ったものの、「0」には増える余地があるからまだいい。それが一度「 」になってしまったらそこにはもう増える余地なんか一切なくて、余地がないのもなくて、なんだろう、神が投げた匙がたまたま頭に刺さって死ぬくらい救いようがない。「 」は恐ろしい概念だ。何もないを通り越してさらに何もないんだもの。「 」とは一体何であるか。空の境界は関係ありません。ウーン、そもそも「 」に対して「ある」だの「ない」だの言うこと自体非常にナンセンスだと思うのだが、「 」は「         」。などという書き方をするわけにもいかないので、一応文章の形に整えるとすれば、「ないものがありもしないしないでもないもの」「時間と空間どちらの中にも存在できないもの」って感じかなあ。なに言ってんだ?

 

そりゃ    倍よ

「ない」の定義については大昔からすごい人たちが議論を戦わせている。「ない」=「ない」とか、「ない」=「『ない』がある」とか、「ない」=「『ある』がない」とか、「ない」=「  」とか、「ない」は「ない」とか、なんかよくわからんが、とにかく色々ある。色々あるがやはり、一番おっかないのは「ない」=「  」だと思う。広告動画を見ているときに、「累計売上『    』本突破!」なんてコピーが出てきたら、怖くて泣いてしまうかもしれない。彼らは一体何を売ったんだ。客は一体何を買ったんだ。それを考えれば冒頭の2200本というのは実に立派な数字だ。なんせ2200は「 」の……ええと、何倍なんだろう。

 

 

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