珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

『あるティッシュケース』様のお呼び出しを申し上げる覚書|柔らかな布で、色は白、表面に黒い3つの記号をお召しになった、名前は……

試行回数を重ねれば猿もいつかはタイプライターでシェイクスピアを書ける的なアレ

想像してほしい。ここに、ティッシュケースがある。そのティッシュケースの素材は柔らかな布で、色は白、模様や装飾は一切ない。で、このティッシュケースの表面に黒いバツ印を1つと黒い丸印を2つ、ランダムに置く。置いたあとは、再び取り除く。この黒バツ1つと黒丸2つをランダムに置いては取り除くという行為を何度も繰り返していけば、幾度目かの試行において、このティッシュケースはたまたま偶然、「 ある・・ ティッシュケース」になる。「 ある・・ ティッシュケース」の正体は後々述べるとして、「 ある・・ ティッシュケース」とは、当初の白無地のティッシュケースとも、3つの記号がひっついたティッシュケースとも違う、顔と名前と性格を持った、いわば固有名詞的なティッシュケースである。そうなるとこのティッシュケースは、『ただのティッシュケース』とか『白いティッシュケース』とか『無地のティッシュケース』といった種族的な呼び方を離れて、 ある・・ ティッシュケース』の名で呼ばれることになる。そうなるために我々がやったことといえば、黒いバツ印1つと黒い丸印2つをランダムに置いては取り除く、これだけである。ティッシュケースに顔を描いたわけでもなければ、名前をつけたわけでもなく、ましてや性格を設定したわけでもない。ただ3つの記号をランダムに置いたり取り除いたりしていただけである。

 

かんたん人間

幾つかの記号をランダムに置いたり取り除いたりしているうちに、「 ある・・ なにか」が出来上がる。それはもはや「ただのなにか」ではなく、『 ある・・ なにか』という名で呼ばれるところの「 ある・・ なにか」である。なに言ってんだ?ともかく、無作為に並べた3つの記号によって、『 ある・・ なにか』という名で呼ばれる固有名詞的な存在を召喚できるのは、なかなか愉快である。私も、私の存在をどこまでもとことん単純にして、それこそ3つの記号くらいに単純にしておけば、ある日誰かが暇を持て余してランダムに置いたり取り除いたりしている記号の中から、『白黒れむ』という名で呼ばれるところの「白黒れむ」が偶然ひょっこり出てくるようなことだって、可能なのかもしれない。あ、白黒ははぐろって読みます。

 

アキネイターは優秀だなあ!

単純な記号から存在が呼び出されるってことは、端的に言えば、それだけ有名ってことだ。我々は「電気」「ネズミ」という2つの記号から、いとも容易くピカチュウという存在を呼び出すことができるだろう。私は無名の一般人なので、私という存在を呼び出すのに、膨大な記号を要する。種族は人間、性別は女、国籍は日本、どこ県のどこ市どこ区どこ町に住んでいて、こういう背丈、こういう容姿、こういう性格をしており、今の仕事はこう、過去の経歴はこう、エトセトラエトセトラ。これだけ挙げてもまだ、私の他に、これら全ての条件を満たすような、私に似たもう1人の人間が候補に上がったりするかもしれない。そうなればもうお手上げで、私はガックリと肩を落としながら「私は白黒れむという者です」と、私の固有名詞を白状しなければならないだろう。

 

恥ずかしい記号っていう自覚はあったんですね

現実世界において私を呼び出すための記号を少なからしめることは大変むつかしいが、インターネット世界においては、現実世界でそれを行うより幾分か簡単である。現実世界の私にとっては身に余るような特異な記号を、インターネット世界の私に対しては気軽にぺたぺた貼り付けることが出来るからである。もしも私が、現実世界において、「『珈琲三杯』なるブログの運営者」だとか「限界フリーター」だとか「モノトーン愛好家」だとか、そういう記号を引っ付けて闊歩しようと思ったら、なかなか勇気が必要である。端的に言って、恥ずかしい。だから私は、現実世界においては「『珈琲三杯』なるブログの運営者」という具体的な記号の代わりに「趣味でブログを書いている人」という当たり障りのない記号を用いるだろうし、「限界フリーター」という自分でもよくわからない記号の代わりに「フリーター」というごくごく一般的な記号を用いるだろうし、「モノトーン愛好家」なんて記号も、好きな色の話にでもならないかぎり、自ら進んで暴露することはあるまい。そうやって安全な記号ばかりを選んでいくと、必然、私という個体を呼び出すのに膨大な記号を要する羽目になるわけだ。安全な記号は、大勢の人間に当てはまるから。「『珈琲三杯』なるブログの運営者」といえば、おそらく私1人しか該当しないだろうが、「趣味でブログを書いている人」なんて、ごまんと存在するからね。

 

ある・・ ティッシュケース』の名で呼ばれるところの「 ある・・ ティッシュケース」の正体

 

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かわいい

 

 

 

 

ミッフィーティッシュケース』

 

 

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