6×12×6＝1000についての覚書｜久しぶりに有意義な計算をした

「毎月6万円の先取り貯蓄をして6年で1000万円貯めた主婦」という記事を読んで唐突に始まる算数の授業

6×12＝72

72×6＝432

1000-432＝568

計算した感想ですが

かつて山崎パンより発売されていた「ザクグルチョコ」というドーナツのカロリーは568、ドーナツは穴があいているので実質カロリー0、すなわち568は実質0、実質0にいくら乗じようと実質0なので、568万の誤差も実質0

実質って便利な言葉だなあ

補足という名の弁護をしておこう。かの記事には確かに「毎月6万円の先取り貯蓄をしている」とは書いてあったが、「毎月6万円ずつ貯蓄している」とは書いてない。つまり毎月6万以外にも貯蓄している可能性がある。というかそうじゃないと明らかに計算が合わない。毎月6万ずつとなると、6年で432万。実に568万もの額が不足する。はて、この568万は一体どこから出てきたのか。本命、先取り貯蓄の6万のほかに月末平均8万の余剰金があってそれを貯蓄に回していた。対抗、毎年100万弱のボーナスを貯蓄に回していた。単穴、資産運用など給与外の収入を貯蓄に回していた。大穴、432万は大金なので実質1000万。さあ張った張った！

犬とお金と論理の飛躍

ハア。毎月6万円の貯蓄によって6年で1000万円貯まったらサイコーだな。みなさんも、そう思いませんか。お金がこの世の道理や真理や不変の定義やその他あらゆる尊いものを乗り越えて我々のふところに駆け寄ってきてくれたら、こんなにサイコーなこともないと思いませんか。自分にたいそう懐いている犬が、目の前の壁や柵や塀やそういう障害物をヨイショヨイショと乗り越えてこちらに駆け寄ってくるのを見たら、嬉しくなっちゃうでしょう。お金が「我らの主人を見つけた」という顔をしながらこの世のあらゆる障害物を乗り越えてこちらに駆け寄ってきてくれたら、どんなにいいことか。ハハア、この世の道理や真理や不変の定義ってのは、障害だったんですね。お金が我々への愛情のために、そう愛情のために、6×12×6＝432という一見どう足掻いても覆せそうにない計算式を覆して、今まさに1000となりつつこちらへ駆け寄ってきてくれたら、どんなにいいことだろうなあ。

現実見て

見るための目がない

SANチェックどうぞ

所詮は空想でしかない「私のことが大好きなお金」について思いを馳せて悲しくなるのはやめよう。せめて少しくらい愉しいことを考えよう。毎月6万円の先取り貯蓄をして6年で1000万円貯まったらやりたいことを考えよう。ええと、もしも毎月6万円の先取り貯蓄をして6年で1000万円貯まったら、ええと、1000万もあるんだからバイトを減らして、ああでも1000万あると言っても、いえなんでもありません、1000万はあるんですけど、実のところは、いえ、いえ、6年で1000万貯蓄したわけですから1000万はあるので、1000万あるからバイト減らしてもいいわけで、でも減らすと568万が、ああ、いえ、1000万はちゃんとあるから大丈夫なんですけど、6万×12ヶ月×6年＝1000万なのでぜんぜん大丈夫なんですけど、568万とかホントどこから出た数字だよって感じなんですけど、でも誰かが言うには私は568万必要らしくて、私の手元には既に1000万あるのになんで568万が必要になるのかさっぱり分からないんですけど、どうして私がこんなに慌てているのかもさっぱり分からないんですけど、あの、ひょっとして私はなにか乗り越えてはいけないものを乗り越えてしまったのでしょうか？毎月6万の先取り貯蓄を6年続けて1000万って、別になにもおかしくないですよね？6×12×6＝1000ですもんね？

現実見て

見るための現実がない

その人多分別次元から来てる人だよ

この世の道理や真理や不変の定義を敢えて乗り越えないことがいかに大切か身にしみて分かったところで、私はもうお金がこの世の道理や真理や不変の定義を乗り越えて私の元にやってこないかなあなんて戯けたことを抜かすのはやめにします。少なくとも我々の世界において6×12×6は432なんです。1000にはならないんです。1000になるとしたら、それはなにか1000になるためのに必要な別の要素が、つまり説明できる568が必ずあるに違いないんです。なければならないんです。そこで「568は神によって与えられた恩恵である」なんて抜かしてみたとしても、それはそれでいいです。「神のおかげ」という説明が一応できるわけですから。これは説明と言っていいのかな？まあとにかく、私がいいと言っているのでいいんです。「568はこれから掘り当てる予定の徳川埋蔵金」「568はコウノトリさんが運んできてくれた」でもいいです。説明は説明なので。よくないのは、「6×12×6は我々の世界において疑いようもなく1000であり、それを説明するのにこの式以外のものはなに一つ要しない」と言い張ることだけなんです。