珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

すべてを見抜く人間観察のプロvs完全に目が死んでるフリーターの女についての覚書|with the eyes of a dead fish.

こういう人に出会うとちょっとだけ人間のことが好きになっちゃうな

バイト先に向かってる途中で客引きのホストに話しかけられたけどガン無視して歩き続けてたら、そのホストから「あの!!お姉さん!!お姉さん!!お姉さん目がここにないものを見てるよ!!どっか別のところを見てる!!」って言われてホストの観察眼すげえなって心底感心した。視界の右後方に遠ざかっていくホストを尻目に、私が金持ちのマダムだったら店名と源氏名を聞いて後日指名しに行くくらいしてもいいなと思った。いやマジですげーんだわあのホスト。たった15秒くらいの間で私のすべてを言い当てて帰りやがった。いやすげーわ。人間観察のプロって本当にいるんだなあ。

 

コンビニシミュレーター

その日……というかその数日前から私は疲労と寝不足と鼻水で頭がたいへんぼんやりしており、辛うじて働いている部分も「バイト前にセブンに寄るかファミマに寄るか」という議題でいっぱいいっぱいになっていて、通りを歩いている他の人間のことなんか目に入っているようで全然入っていなかった。その一方で、頭の中ではせわしなくセブンに入ってみたり、ファミマに入ってみたり、セブンの新商品を買ってみたり、ファミマのお気に入り商品を手に取ってみたり、完全にVRコンビニエンスストア状態である。実際にはまだ店の看板すら見えていないのに。まさにあのホストの言うとおり、ここにないものを、ここじゃないところを見ながら歩いていたのだ。その後は誘蛾灯に引き寄せられる虫のごとくフラフラとセブンに入り、何も買わずに店をあとにした。

 

心ここにあらず(心ここにあったためしがないので)

そうか。私はここにないものを見て、ここじゃないところを見ていたんだな。そのせいで……いや、そのおかげで、いつもより心が凪いでいたのだな。あの日もいつもどおり、ザ☆夜の繁華街って感じの、毒キノコのような喧騒の中を進みながら、それでも不思議と毒を食らった心地がしなかったのは、ここにないものを見て、ここじゃないところを見ていたからなんだな。ここにはないもの、ここじゃないところで頭と視界をいっぱいにしておけば、毒に侵されずに済むというわけだ。上の空にこんな素晴らしい防衛機能があったなんて。空の上に天国があるというのなら、上の空にもまた、天国は広がっている。

 

上の空を下に置いたらたぶん神よりエラくなるだろう

というわけで、私はあの日から至って真面目に、正気を維持したまま上の空に入る方法を模索している。なんじゃそりゃ。上の空を己のコントロール下に置く方法と言っても良い。四六時中上の空では困る。上の空ではマトモに労働することができないからである。しかしこう……なんかこう……いい感じに……いい感じに上の空のいいところだけを抽出して……かつそれを自分の意思でいつでもオンオフ可能な状態で労働することができれば……きっと労働の毒にも耐えられるはずだ。切っておきたいスイッチが急に入ったり、入れておきたいスイッチが急に切れたりするのが、労働の現場である。それを上手く制御してくれるのが、上の空のいいところだけを抽出したナニカである。ナニカって何よ。知らない。

 

それはさておき

いつもくすんだピンクのワンピースを着て髪も化粧もバッチリきめてるめちゃくちゃカワイイお姉さんが近頃よく店に来るんだけど、そのめちゃくちゃカワイイお姉さん、話してみたらお兄さんだったわ。いやお姉さんで合ってるのか。めちゃくちゃカワイイお姉さん、お姉さんだったわ。ウム。これでよい。