珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

笑ゥひゃくまんにんについての覚書|我々はいつどこで何に対してどう笑うべきかって問い自体が笑えないんだよな

当ブログにおける引用文献の書式はその時の気分です

とにかくに笑われるということは被害であり、精神上の損傷であった。

柳田国男『不幸なる芸術・笑の本願』1979,岩波書店

そうだそうだ(便乗)

 

これだけじゃあんまりなので続きも引用しよう 皆様の理解も深まるし字数も稼げる

未開人が人の笑いに敏感であることは、夙く旅行者たちの観測するところであったが、これと同じことは我々の嬰児にもある。多くの人にまたは大きな声で笑われると、意味を知らずにも泣き出す赤ん坊は多い。文明人などという者の中にも、群とともに笑い得ないことは不愉快でまた淋しい故に、時々は附合笑いということをする。殊に日本人では人が笑い自分が笑われる不幸を痛感する人が多かった。

なるほどみんな淋しかったんだな。じゃあ仕方ない……とはいくまい。おっとあぶねえ。仕方なくない。そりゃ4、5人くらいで集まって顔つき合わせて会話しているときに付き合い笑いをするならまだしも、100万人くらいが一斉に付き合い笑いしたら、笑いの対象になっている者としては堪ったものじゃない。え?100万人くらいが集まって顔突き合わせて一斉に会話する場面なんて一体どこにあるんだいって?イヤイヤ100万人くらいが集まって顔突き合わせて一斉に会話するなんて言ってませんわよ。どこか特定の場所に集まる必要はないんです。顔突き合わせる必要もないし、ましてや一斉に会話する必要も全くないんです。にも関わらず、笑いは起こる。運ぶ足もなけりゃ突き合わせる顔もなく会話する口もない100万人くらいをいとも容易く集められる場が存在するってのが、現代のおっかないところですわ。

 

全財産より大きい数字は数えられない 100円くらいはたぶん持ってる

正しい笑いは……ないよ。多分。よい笑いはあるかもしれないけど。それと同じような具合で、正しくない笑いも……ないよ。多分。よくない笑いはあるかもしれないけど。私の頭の中じゃ100点の笑いと0点の笑いは存在しないけど、そのあいだに位置する笑いなら小数点いくらまででもあるね。笑いは。1.41421356点の笑いとか、3.14点の笑いとか、なんかちょうどいい点が思いつかないな、99.99999……点の笑いとか、いくらでもあるよ。

 

長い

たとえばここに大変気の合う2人がいて、その片方が世界一えげつない下ネタを言い、もう片方がそれにゲラゲラ笑い、この2人を除いた地球上の全ての人間が一斉に顔をしかめたとしよう。この笑いには何点が付けられると思う?2人が楽しそうだから、世界一えげつない下ネタによって地球上のほぼほぼ全ての人間を不快にしたことによる減点を考慮しても、90点くらいはある?それとも世界一えげつない下ネタによって地球上のほぼほぼ全ての人間が一斉に顔をしかめたのだから、2人が楽しそうなことによる加点を考慮しても、0.00000001点もない?じゃあ、もしも片方が言ったのが世界一えげつない下ネタではなく、世界一寒いオヤジギャグだったら?世界一ヘタクソな犬の鳴き声の物真似だったら?世界一カッコイイ芸能人のマル秘裏話だったら?世界一どうでもいい近所のおじさんのプライベートだったら?我々はどこまで、互いの笑いを検閲し合い、分析し合い、採点し合うことができると思う?0.00000001点だけど許される笑いと、99.99999999点だけど許されない笑いって、あると思う?許す、許さないは誰が決める?神は無限面ダイスを振ってすべてを決めろ!

 

ヨシ!病院行くぞ!

この柳田国男の文芸論集、実を言うとまだ30ページくらいしか読んでないんだけど、このあとの文章の中には、きっと震え上がるほど恐ろしい笑いの本質が含まれているんだろうなと、今から怯えている。現代にも通ずる、いや現代だからこそ通ずる、笑いに関するヤバいアレがアレしてると思う。ちょっと話が飛びますけど、我々にとって、「誰かの笑い声」ってのは、

のような耳で聞く笑い声だけではないじゃないですか。

774:名無しさん@はてな 22/10/31(月) 23:59:59

ウケる(笑)

のような目で見る笑い声も、耳で聞く笑い声と同じくらい身近で当たり前じゃないですか。で、そういう目で見る笑い声が、わざわざペンと便箋と封筒と切手を用意してポストに入れて相手に届くのを待たなくても、リアルタイムで……そうリアルタイムで!相手に!送れる!なんてこと!見方を変えれば、誰かの笑い声を遮断するのに、両の耳を塞ぐだけでは足りぬということだ!目も!目も閉じなければ!なんてこと!耳を塞いで目も閉じたのに、まだ入ってくる!どこから?どこから!なんてこと!誰かの笑い声が、どこからともなく自分の中に入ってくる!

 

オタクはちゃんと卒業したからもうオタクじゃないんだけど次の記事あたりで今いちばん熱い推しの話していい?5000字くらい

えーとつまり、昨晩はそういう感じのところまで読み進めてたんだけど、気づいたらPixivでエッチな小説を読んでいたので、それ以上のことは分からなかった。おかしい。途中までは確かに柳田国男を読んでいたはずだったのに、私はいつからPixivでエッチな小説を読み始めたんだろう。おかしい。これはおかしい。おかしいなあ。