珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

カラスの羽根を背負ってピーマンを食べる覚書|ピーマン残しちゃいけませんとハッキリ言ってくれるみさえは優しかったんやなって

あのね、なにも責任感が強いわけじゃないの

責任しか背負えるものがないだけなの、責任を背負うフリしかできないの、もっと言えばただただ怒られたくないだけなの

 

人通りが少ないとカラスがそこらじゅうを我が物顔で歩き回るようになるから近頃の店の前はカラスの羽根でいっぱい

背中が軽くて落ち着かないな、いっちょ責任でもしょっとくか。よっこらしょっと。そんな具合で、私はいとも軽々しく責任を背負う。いとも軽々しく背負ったフリをする。背負ったフリなので、本当の意味で背負っているわけではない。かといって、全く背負っていないわけではない。背中には確かに重みがある。驚くほど軽い重みである。背中に乗るか乗らないか程度の、触れるか触れないか程度の、感じるか感じないか程度の、カラスの羽根のごとき重みである。カラスの羽根を背負うことに興味があるならば、いっぺん、燃えるゴミの日にゴミ捨て場に集るカラスどもを強引に追い立ててみればいい。羽根のひとつやふたつ、その場に落としていくだろう。で、それを背負う。フム。これが、日々こいつの背負っている責任とやらの重みなんだな。か、軽~~~~~

 

カラスは頭がいいからな

本当の意味で背負える責任なんてのは、私の身近には落ちていない。そう、それは、生きたカラスだね。まるまる一羽の生きたカラスなんて、そうそう落ちているもんじゃない。でも世の中には、ふくふくと肥え太った立派で健康なカラスを背中にくっつけて生きている人たちがたくさんいる。背中のカラスを誇るかのように堂々歩いている人もいれば、カラスの重みで背中が曲がっている人もいる。その一方でなんかもう立つことさえもままならなくて、ずりずり、ずりずりと這って進んでいる人もいる。私は常に彼らの先を歩いている。背中が軽いぶん、足取りも軽くて、疲れにくく、どんどん進めるからだ。私はいつも軽快な足取りで彼らを追い越す。彼らのカラスはいつもじっと私を見つめている。

shirokuro-044.hatenablog.jp

 

米津玄師「ピーマン」

 思えば、背負ったうちに入らない責任ばかり山ほど背負って生きてきたものだ。それはいつだっておままごとだ。背負うのは責任のレプリカだ。それで、いつまで経ってもそのおままごとがやめられないものだから、よく食べよく眠りよくおままごとをする私を見て、皆はこう言う。「責任感が強いね」と。あーあー、ちがいますちがいます、おままごとが好きなだけなんです。おままごとに強いだけなんです。おままごとに自信ネキなだけなんです。責任を背負うごっこ!例えるなら、小さな子どもが大人と同じメニューを前にして、「このピーマンはぼくがせきにんをもってたべる」と言っているようなものなのだ。エライ!子どもの場合の責任は、彼らが「せきにんをはたす」と宣言した時点で十分すぎるほどエライのだ!最終的にピーマンを食べられようが食べられまいが、「せきにんをもってたべる」と宣言した時点で、その場にいるどんな大人よりもエライ!じゃあ大人は?大人は……大人は、そもそもあんまり宣言しちゃだめなんだ。宣言せず、ただ黙ってピーマンを平らげて、できれば隣の人の苦手なにんじんも無言で食べてやって、皿をキッチンへ持っていき、ぴかぴかに洗ったあと、布巾で拭いて、食器棚に戻し、全員の食事が終わったらそれも洗って拭いて戻し、テーブルを片付けて、それでようやくエライ……かもしれないのだ。大人ってたいへんだね。

 

や、焼肉のタレさえあればたくさん食べられるから……

だいぶ話が脱線したが、えー、つまり私は、目の前のピーマンをせきにんもってたべると宣言した子ども。それだけで周りの大人から褒めてもらえる子ども。もちろん私は立派な(立派ではない)大人で、褒めてくれるのもまた大人なわけだけれども。私が社会で背負っている責任は、会社の売上を伸ばすとか、ヒット商品を開発するとか、若手の面倒を見るとか、或いは未来の地球のためとか、子どもたちの将来のためとか、或いはこれまでの家族のためとか、これからの家族のためとか、そういうのじゃなくて、所詮「ピーマンをたべる」に過ぎないのだ。伸ばす売上なんて私の身近には見当たらないし、開発するヒット商品だって落ちてない。地球や子どもたちの未来どころか自分の未来すらおぼつかないし、これまでの家族はさておき、これからの家族なんて一体どうすりゃいいのか見当もつかない。それでもマトモに生きているような顔だけはしとかにゃならんので、私は大量のピーマンを前に、大観衆に見守られながら高らかに宣言する。「いまから、これらのピーマンを、わたしがせきにんをもってたべます」。沸き起こる拍手、拍手、大喝采!ブラボー!

 

 

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