留まる者の宿命についての覚書|あんなに一緒に働いたのに夕暮れはもう違う色
新陳代謝のいい職場です!!!!!
一人前になった矢先に辞めていくバイトつらすぎ問題。今日出勤したら、新たに掲示されたシフト一覧表の中に██████████████が1行増えていた。従業員の名前が縦にずらっと並んでいるそのうち1つの行が黒塗りというか灰塗りになっていて、早い話、彼は退職が決定しているというわけだ。グゥ。彼は今年の頭に雇用された夜勤バイト3人組のうちの1人で、業務のほとんどを私が教えた。彼らを雇うまでの夜勤帯は、短期雇用組の退職と新人の連続バックレでボロボロになっており、3人はまさに希望の星であった。そのうち2人はフリーターなのでシフト上の安心感もあった。みな若くて元気で礼儀正しく、ハキハキしていて仕事の覚えも早い。特にフリーターの2人には出来るだけ長く勤務してほしかった。ウーン、半年。半年かあ。ところでフリーターの2人は同時応募の仲のいい友人同士であり、今回辞めた1人がその片方なのだが、もう片方はというと現在怪我で休職している。5月には完治予定とのことだったが、復職の話は全く出てこない。ウーン、ウーン。悪い予感がプンプンする。これはもう、2人揃って抜けちゃうパターンですねえ。
そういうことを経験する前に辞められるのは勝ち組
気持ち悪い風を吹かせて恐縮だが、うちのバイト、特に面倒な業務が多い夜勤は半年勤めてようやく一人前に動けるというか、私目線で言えば「安心してなんでも任せられる」ような面が大いにあって、それ故に半年ちょうどでいなくなってしまうのはなんとも口惜しい。時間のかかるアレやソレを短時間でパッパと終わらせられるようになる頃合、こちらが先回りして細かい指示を出さなくてもよくなる頃合、諸々のイレギュラー対応にもこなれてくる頃合が、だいたい半年。特にイレギュラー対応は場数を踏んでナンボみたいなところがあるから、それが全てリセットされてしまうのが世知辛い。オイオイオイまだ110番どころか119番もしたことないうちに。トイレが詰まったり空調が壊れたりシステムサーバーが落ちたり停電したりドリンクバー周辺が水浸しになるのだって体験してないだろう。クソ客とガチ喧嘩した末にエラい人からクソ客全店出禁のお知らせと労いのメッセージが送られてくるような店なんてそうそうないぞ。いいのか?今辞めて。本当に!?
俺の屍を越え見事就職を勝ち取ってゆけ
とはいえ、彼らフリーター2人は元々「仕事が決まるまで」ということで働いていたのだから、いつ辞めても全然おかしくなかったのだ。もし仕事が決まった故の退職なら実に喜ばしいことだ。それなら最終出勤日前に1回くらい会っておきたかった。シュークリーム買ってあげたのに。つい1ヶ月ほど前にも新たにフリーターの男の子が入ってきた。彼もまた「仕事が決まるまで」とのことであった。みんな真剣に就職と向き合っててすごいなと思った。私のように、「就職活動をするつもりは今のところさらさらないので、もしも雇っていただけるのであれば、当面の間はここで働くつもりです」というタイプのフリーターはなかなかいないものだなあ。なかなかいないのが普通なんだろうな。
相方ガチャ1日1回無料
もし当面フリータータイプの人が入ってきたら、私+その人+学生1人2人程度で事足りてしまうので、それはそれでちょっとつまらない。「今日は誰と一緒かな?」という楽しみがないのは労働のモチベーションに大いに関わってくる。将来の経験豊富なベテランになり得る人材が来て欲しいなあと口では言いつつ、実際に来られたらなんかこう、虚しくなっちゃうだろうな。自分に。私も所詮アルバイトの1人なので私なんかがいなくとも店は回るのだが、「私がいなかったら回らないような部分が店の中に1つくらいあってほしいなあ」という下らない考えが頭の片隅にあるのだろう。私がそんなタイプの人間の側に立つなんて思ってもみなかったことだ。どちらかといえば、そういう「自分がいなきゃみんなダメダメなんだから」というタイプの人間は好きではなかったはずだ。だから今でも、「最近の若い子は優秀だなあ、いやーこれでいつでも辞められるわあ」なんて軽口飛ばして、店の中に自分の確固たるポジションを作らないようにしている。店のためでも誰かのためでもない。私のしょうもないプライドのためだ。
ちゃんと教えるんだよ、自分だって教わっただろ
新しく入ってきた人に仕事を教えるのは結構な重労働なので割と本気で手当が欲しい。こうも短期間に同じことを何度も何度も説明していると、正直飽きてくる。時間がかかる業務ほど新しい人にさせてやりたいので、残った業務と残り時間との戦いで胃が常にギリギリする。そういえば、新人を受付に放置して全部自分でやっちゃうタイプの彼もこないだ辞めてしまった。月に1日しかやらない貴重な業務も毎月彼が1人でやってしまうせいで、先日は退勤後にヒーヒー言いながらA4用紙いっぱいの指示文を書き置きする羽目になった。自分がいなくなったあとの店のことももう少し考えてほしかったなあ。かつて10を教わったのなら、そこに自分の経験から1を足して、11を教える。そうして、誰かがいなくなったあとも店はぐるぐるぶんぶん回るんだから。誰かがいなくなっても。