珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

己の過去から発掘された「新生活が捗る逸品」についての覚書|人の過去というものもまた逸品

結論

無い新生活は捗らない

 

羽ばたく前から墜落してるんだよなあ

……というのはあんまりなので、そうだな、せめて過去に存在していたかもしれない新生活について思いを馳せてみようじゃあないか。私が最後に味わった新生活、まず思い浮かべるのが、大学を辞めてしばしの無職期間ののち、大通り沿いのスーパーで働き始めた当時のこと。ウーン、びっくりするくらい「新生活」感がない。生活が変わったのは事実である。生活が新しくなったのもまた事実である。それまで辛うじて大学生だった生き物が死に、フリーターという生き物に生まれ変わって羽ばたいたのだから。ただ、羽ばたいた先に止まり木がいっぽんも無かったというだけの話であって。ああ……ああそうね。「新しい生活」が「新生活」であるとは限らないのね。

 

10年前 ウッ頭が

というわけで、私は「新しい生活」と「新生活」を厳密に区別しておこうと思う。フリーター1日目から始まった生活は「新生活」ではなく「新しい生活」である。お題は「新生活が捗る逸品」であって、「新しい生活が捗る逸品」ではないのだから、今ここで当時の暮らしぶりについて考えたところでお題の意図には決してそぐわないのだ。なので、それより更にひとつ遡ってみよう。大学を辞めたのだから、大学に入った時期もあるはずだ。大学に入ったのだから、一人暮らしを始めた時期もあるはずだ。その時のことを思い出そう。喜びに溢れ、希望に満ち、これから続く大学生としての暮らしに胸を躍らせていたあの時期のことを!……やっぱりやめていいですか?

 

ニトリで買った掃除機が1ヶ月で壊れたから代わりにダイソーで買ったほうきとちりとりを10年経った今も愛用している

とりあえず、当時購入したものについて記憶を遡ってみる。洗濯機。冷蔵庫。炊飯器。電子レンジ。掃除機。小ぶりなフライパンと鍋のセット。包丁。食器。その他細々した掃除用具など。あまりにも普通すぎて何も感想が出てこないけれど、ごくごく普通の一般家庭の子供が親元を離れて一人暮らしを始めるときに買ったり買ってもらったりする道具ってどこもこんなもんじゃないですか?だって、新生活に何があれば捗るかなんて、新生活を始めた時点ではわかりっこないし、新生活の最初は大抵バタバタで時間もお金も余裕がなくて「新生活を捗らせるために家庭用生ゴミ処理機とか買っちゃおうかナ~」なんて考えるどころじゃないし、そもそも前の家から持ってきた荷物の分解さえまともに終わってないのに新しいものを買い足している場合じゃないし、バタバタがひと段落して「あれば新生活が捗りそうなもの」について考える余裕が出てかつそれを入手した頃にはもはや新生活らしさなんてほとんど残っていないし。こうなると、「バタバタの中でたまたま買ったアレがたまたま新生活を捗らせた」「たまたま前の家から持ってきたアレがたまたま新生活を捗らせた」の実質二択になるわけだな。

 

我々がバタバタしないと神様も退屈でしょうに

じゃあ、ハブられたもう一つの選択肢、「新生活を送る中で今の暮らしを豊かにしようという明確な考えのもと購入したものが思惑通り新生活を捗らせた」について考えようか。そ、そんなこと……実際にあるのかな?今の暮らしを豊かにしようとする考え、すなわち「捗る逸品」についての考えがハッキリ浮かぶことなんて、新生活に慣れてきた頃、すなわち新生活感がだいぶ薄れてきた頃にしか起こらないような気がしないでもない。それは「新生活が捗る逸品」というよりもむしろ「ただの生活が捗る逸品」である。要は、割とフツーの買い物である。「新生活が捗る逸品」と言うからには、新生活感のあるなしが非常に重要な要素になってくる。当然新生活だからといって全員が全員バタバタしているとは限らないけれど、もし私が神様だったら、新生活初日からどっしり落ち着き払っている人間を見たら「新生活なんだからもっと人間らしくバタバタしろ!」と思う。と、思う。

 

過去は減らせもしないし増やせもしない

過去の新生活の経験や反省に基づいて、「新生活にはアレがあると捗るから今回の新生活もアレを用意しよう」という思考が出来るほど、新生活の数をこなしている人はすごいな。私の実質的な新生活は、先ほど綴った大学入学時の一人暮らしが最初で、現状最後だもの。振り返り可能な新生活が存在しないのよ。仮にもし、私がこの4月から「新生活」をスタートさせていたら、大学に入学したあの頃を振り返りながら、「そういや新生活にはアレがあった方が捗るな」などと考えることが出来たのだろう。いやあ、実際はなーんにも覚えてないんですけどね。この際過去の新生活でなくてもいい。ありとあらゆる己の経験もしくは反省から、今回の新生活ではアレをやろう、アレを買おうという考えに至ることが出来るような、充実した過去。根がインドアで守銭奴な私には、振り返れるだけの愉快な体験がないし、振り返れるだけの痛快な買い物がない。体験しなかった過去は振り返れないし、買わなかった買い物は振り返れない。刺激的な体験へは一切身を投じず、冒険的な買い物は一切行わず、そんな人生も決して悪いわけではないのだ。ただ、いざという時に過去を振り返ろうとして、振り返れる量が少なかったら、少し悲しくなるだろうと思っただけだ。

 

再結論

無い過去は振り返れない

 

お題#新生活が捗る逸品「新生活が捗る過去」

 

 

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