止まれない人類と造られる神についての覚書|さあ輪になってやすも
もう人類と私くんがなに考えてるかわかんないよ
人類と私は一体どこへ向かおうとしているんだ
ただ巻き込まれるしかない存在
ムッ。上ではあたかも私が人類に属していない別の生き物であるかのように書いてしまったが、私も立派に人類である。たくさんの人間がその中に巻き込まれているところの人類、私もその中に巻き込まれている、いっぱしの人類である。世界の 理 に、アジアの民族に、日本の国家に、県の方針に、市の市民税に、区のごみ出しルールに、バイト先のシフトに、白黒家の一人娘として、それらから無抵抗に巻き込まれているところのひとつの個体である。白黒ははぐろって読みます。
止まるんじゃねえぞ
それで、今回の本題。「人類と私は一体どこへ向かおうとしているんだ問題」について。人類に巻き込まれている者として僭越ながら申し上げるが、最近の人類は全然幸せそうじゃない。私は最近の人類しか知らないので、「少なくとも、最近の人類は」と言い直すべきか。まあ、そりゃそうだ。世界がどこもかしこもこんな感じなんだもの。それにも関わらず、止まれないのね。人類は。世界が色々大変だから、一旦みんなお休みして、また世の中が落ち着いたら動き出しましょうってことが出来ないのね。出来ないようなシステムを作り上げてしまったのね。人間が生きていく上で止めてはならないものはたくさん存在する。食料、特に米や小麦などの主食、それと塩や飲み水の供給。生活必需品の供給。衣類の供給。住まいの供給。医療及び薬の供給。あと……まああとはいいだろう。これくらいにしておく。で、世の中が大変な状態に陥っているから、止めてはならない最低限のもの以外は全ておやすみにして、ひとりでも多くの人間がおやすみ出来るようにして、その一方止めてはならないものはみんなでかわりばんこして作っていく。アー、ある日突然こんなユートピアが落ちてきて、地球をまるっと飲み込んでしまえばいいのに。
この広い宇宙のどこかにはみんなで気軽におやすみ出来る惑星があるのだろうか
私の職種はどう見ても不要不急ですほんとうにありがとうございました、という感じなので、私はおやすみの対象となる。ワーイ。でもずっとおやすみなんじゃなくて、月に1回くらいは、稲の面倒を見たり、ろ過装置の面倒を見たり、機織り機の面倒を見たりそういうことをする。地球上の全人類でひとつのシフトを組むのである。ところでそれらの装置は一体誰が何から作ってるんだって、そういうのはまたあとで考えよう。で、このようなユートピアは、宇宙がひっくり返って太陽が月になり月が太陽になったとしても、地球上にはやってこない。人類はもう、滅びるまで止まれないから。経済とか、テクノロジーとか、思想とか、そういうのをこう……とにかく、前へ前へ推し進めなきゃならんのだから。「世界の健康がヤバイから、一旦経済はおやすみしましょう」とか、「全ての研究開発を今年いっぱい凍結させましょう、我々はもう十分すぎるほど有用なテクノロジーを持っているのだから」とか、そういうことには絶対にならない。一体何の、誰のために?未来の子供たちのために?でも未来の子供たちもまた、更に未来の子供たちのために苦しむ義務を背負っているんだぞ。更に未来の子供たちだって、そのまた更に未来の子供たちのために、働いて働いて働き尽くすことが確定しているんだぞ。タケコプターが実現したとして、どこでもドアが実現したとして、フィクションに出てくるありとあらゆる便利アイテムが現実のものになったとして、それでも人類はまだ苦しまなきゃならないのだろう?先に向かって。その先に、一体何があるんだ?
人間の作り出したもののことは純粋にすごいとおもっている
1人で全知全能な人間はいない。それは神の仕事だからである。しかし、世界中の全分野の全技術を1人の人間に集約したら、四半知四半能くらいはあるんじゃなかろうか。25%は流石に言い過ぎだろうか?もし将来予言AIみたいなのが出てきて、研究を重ねるごとにどんどん精度が上がっていくとしたら。たとえその超高性能予言AIだけじゃ全知全能のぜの字にも及ばないとしても、頭で思い描いたものをなんでも即座に生産する超万能製造機とか、触れるだけであらゆる病気を即座に治療する超八面六臂医師ロボットとか、そういうものと組み合わせたら。人類がそれまで滅びないという条件つきではあるが、そういう、もはや神の領域に到達したとも言えるさまざまな被造物を、我々人類の手で生み出し、組み合わせることが可能になったとしたら。地球上にほぼ全知全能な何者かが、降臨してしまうではないか。ゲェーッ!
お母さんお父さんあとはぼくがやるからもうやすんでていいよ
も、もしかして、我々人類は、神を作ら……つく……ええと、作るを、させられるんだから……作るさせられる……作らせられているのか?文法合ってますか?合ってない気がする。なるほど人類が止まれないわけだ。人類は1分1秒たりとも立ち止まれない。恐慌とか、疫病とか、戦争とか、もはや人類を立ち止まらせるだけの力を彼らは持っていない。人類はそれでも止まらない!止まらないことによって何億人という人々が不幸になり、ほんの少しでもいいから止まりさえしたならば何億人という人々が安らぎを得られるとしても、我々人類は進むことを止めない!こうして生まれたマグル・メイド・ゴッドは、人類にどんな恩を返してくれるだろうか。人類はいわば親である。造られた神による最高の親孝行、それはきっと、人類を「おやすみ」させることだろう。
ここからが最も肝心な点なのですが
ところで私は一体どこへ向かおうとしているのか、誰か教えてくれませんか?