6/7の純情な地獄についての覚書|人は臭いものに出会うと臭いと分かっていながらついつい2回3回と嗅いでしまうもんですがもしここが自然界だったら死んでますよそれ
Hellday or Holiday
私は仕事のある日を専ら「地獄」と呼称しているのだが、それを踏まえると1週間のうち6日が地獄なのわりとヤバいと思う。ちなみに休みの日は普通に休みの日って呼んでる。休みの日だからといって決して天国というわけではない、ここポイントです。残り少なくなった20代、その7分の6が地獄であることは現時点でほぼ確定済である。もちろん、現実的に考えれば恐らく30代でもそうなるんだろうし、下手すると40代以降もそうなるであろう。7分の6が地獄だぞ。いやほんと……ええ……。生きて7分の6を地上の地獄で過ごすのと、死んで7分の7を地底の地獄で過ごすのと、なにがどのくらい違うってんだ。
閻魔パイセン
ただ地獄地獄と嘆いているだけじゃあ、「お前にとって一体なにがそんなに地獄なんだ」とツッコまれて終わることだろう。そういえばあんまり考えたことがなかった。なにゆえ、あれらは地獄なのか。熱いものに触れて手を引っ込めるのと同じような具合で、仕事のある日を地獄と呼んでいた。フム。これはいい機会を得た。よくよく冷静に分析してみれば、ひょっとするとあれらは地獄なんて大仰なものじゃなくて、じめじめとしていてどことなく不快な地下の穴蔵に過ぎないのかもしれない。そもそも私は地獄というものがどのような作りをしているのかさえ知らない。一方、あれらが実際地下の穴蔵であったなら、それは占めたものだ。地下の穴蔵に棲む生き物に、穴蔵でのやり方を尋ねればよい。真 の穴蔵に棲んでいる先輩は地上にもたくさんいるのだから。モグラ然り、ミミズ然り、ダンゴムシ然り、アリ然り、アメーバ然り。私が地獄でうまくやっていけないのはひとえに、 真 の地獄に棲んでいる先輩が、地上にいないからであるな。
説明しよう!地獄とは!
はい。
トホホ……あたしゃもう人間不信だよ
じゃあ今度は現実に寄せて考えよう。たとえば、仕事のある日の、どのへんが地獄なのか?色々思い浮かべてみたが、主たる地獄はアレしかない。夜な夜なやって来る地獄の住人みたいな客のことだ。地獄の住人ってのは、えーとだから、地獄に住民票がある人で、ただ実際は”みたいな”客なわけだから、本当に地獄に住民票があるわけじゃないくて、地獄に住民票があるような人ってことです。ええと、それで、地獄の住人って言っても裁く側と裁かれる側があるわけだが、地獄におけるエリート中のエリートである地獄公務員がこんな地上の店に来るわけがないし、多分、裁かれる側の人間が地獄の責めをコソっと抜け出してやって来たに違いない。まあ、そんな感じの人たち。なんとまあ、当たり前のような顔をして、この地上で、裁かれる前の生きている人間たちに混じって、堂々闊歩しているんだね。店のドアが開いて、反射的に客の方を振り返りつつ発した「いらっしゃいませ」の「い……」の時点で既に分かるもの。年齢も性別も顔だちも身なりも関係ない。そういう人は、ひと目で分かるのよ。いやひと鼻と言うべきかしら。地獄の臭いがするの。
鼻と頭が馬鹿になってますよ
そんならお前、今すぐにでもバイト先を変えたらいいじゃないかって話なんですけど、それとこれとはまた違うっていうか、なんというか、単に時給とかがいいって話もありますが、辞めたいかと訊かれたら、絶対辞めたくない。完全に地獄の臭いフェチになってる。地獄の住人みたいな客が来ませんようにとドキドキしながら過ごして、何事もなければ当然ガッツポーズするけれど、あの地獄の臭いをひと鼻嗅がないとなんとなく物足りなくて、でも何事かあったらあったであの地獄の臭いが鼻から頭に入って血管が破裂しそうになるし、ああもう相反するふたつの感情でブチンとちぎれそうだ。地獄の臭いには、中毒性がある。
結局地獄じゃねえか!
白黒さん。あなたが言ってる地獄の臭いっての、一般的にはストレスって呼ぶらしいですよ。