珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

保険会社ライクな関係についての覚書|現代にはレンタルなんもしない人とかレンタル彼女的な保険商品がいよいよ必要なのかもしれない

自由放任主義

おうちに入って「あったけえ」となれるのは秋口の特権だなあ。予報で最高気温が一気に10度近く下がるとは聞いていたが、まさか外があれほど寒いなんて。夏は家に帰っても結局暑いし、冬は家に帰っても結局寒いし、春は……ワカラン。春は気温や気候に関する印象があんまりない。まあとにかく、私にとって、ありのままの家の中がこれほどありがたく思えるのは秋限定ってことだ。私、家の中については本人の好きなようにさせておく主義だから。家の中が暑くあるというのなら暑くさせておくし、寒くあるというのなら寒くさせておくし、あったかくあるというのならあったかくさせておく。余計な手を加えず、口を挟まず、のびのびと自由にさせておくのだ。いいでしょう?私の教育方針を聞いて私の家になりたいって思った家、いるでしょう?どう?私の家にならない?

 

この現代にあって手が加わっていないことにやたら固執する人ってだいたいなんかヤバい

とはいえ、手を加えられることこそ幸せだと感じる家の中もいるだろう。寒い冬にはあらかじめあったかくしてやり、暑い夏にはあらかじめ涼しくしてやり、家の中自身はなんにもしなくてよくて、ただ人間がそうするようにされるのが好みな家の中もいるだろう。色々なモノで着飾られたりなんかしてさ。ありのままでいられるに越したことはない。けれどもいつなんどきでもありのままがいいというわけではない。ありのままで快適なら下手に手を加えられることなくありのままがよい。もしありのままで不快だというのならしこたま手を加えられて多少強引にでも整えられる方がよい。自分の意思とか、どうだっていい。ただひたすら快適であれるのならば、なにもされなくたっていいし、なんとでもしてくれたって構わない。そんな家の中も、いるだろう。

 

これよか「お前のものはおれのもの」ってハッキリ言い切ってる人の方がまだ分かりやすくてマシじゃないか

私は人からあれこれ手を加えられることは好きではないが、かといってそれらを全て突っぱねるほどの勇気もないのだ。なぜならそう、いざというときに。いざというときになって、どうしても手を加えてほしいときがやってきて、「でもあんた、自分にはなにも手を加えないでほしいって言ってたじゃないか」って逆に突っぱねられて、絶望するくらいなら。あのね、確かに極力手を加えてほしくないが、かといってね、まったく加えてはいけないというわけではないんだよ。こんなワガママをどうやって上手いこと人に伝えよう。口下手には誰よりも自信のある私が。そこんとこの加減が本当に難しい。

 

都合のいい会社

「それってつまり都合のいい身内友人知人が欲しいってことでしょ」と言われたらグゥの音も出ない。そうかもしれないね。いや、そうだね。そうだよ。私は都合のいい身内友人知人が欲しいんだ。文句あるか。当然、一方的に都合よくあってほしいというわけではない。もちろん、その代償としてこちらもあちらに対してとことん都合よくあろうじゃないか。手を加えてほしくないときはどこまでも他人だけど、いざというときには他人から一歩踏み出した関係になる。そうあるように、あちらにとって私が実に都合のいい人間になれるように、極力努力をしようじゃないか。そんなの保険会社となにも変わらないって?毎月保険料を払いはするが普段は一切付き合いなく、有事の際にのみ打って変わってあたかも十年来の親友のように関わりあう、そんな関係!言い得て妙だな!私は誰かの保険会社になりたい!だから誰かも私の保険会社になってくれ!

 

安ゥい!(私の命が)

私が(いつの間にか)加入していた県民共済の管理権を親から譲り受けたときに、私が真っ先にやったのは、最も安いプランに乗り換えることであった。確か月2000円のプランを月1000円のプランにしたんだったかな?いやあ、インターネットで全て手続きできてしまう現代は便利だなあ。しかもこんなに安いプランなのに、運用で余ったお金?は返ってくるとかで、それらしい通知が届くこともあるし。県民共済は、私が月2000円のプランを月1000円のプランに躊躇いなく引き下げたところで、なに一つ口出ししてこない。「いいの?そんな安くて。あなた、2000円くらいなら払う余裕あるでしょう?いざというときに保険だけじゃ足りなくなるわよ?若いうちならまだいいかもしれないけど、いつか絶対2000円のプランに戻したほうがいいと思うけど?欲を言えばもう少し高いプランも検討してほしいわ。また来年あたりに忠告しにくるから、2000円のプランについても考えておいて頂戴ね」なんて言ってこない。これが親だったら、めちゃくちゃ言われるだろうな。娘のことを考えるが故の口出しを、散々にされるだろうな。

 

あっ……

我々は当たり前のように他人の人生に手を加えたり口を挟んだりするが、本来であればそう気楽なものでもない。された側としても、英語の機械翻訳のごとく「すみません、私はあなたの助言を必要としていません」とか「私はあなたが私に対してすることを不快に思います」と答えるのだって、そう簡単なものでもない。言葉の中に、機械翻訳では決して出せない妙味を入り混ぜながら、曖昧な返事をする。「え、ああ、ありがとう。あー、でも無理はしなくていいよ。本当に、その、出来るときでいいからさ」。こんなことを言ってる人間は、往々にしてあまりそれをしてほしくないのである。翻訳機にこの絶妙なニュアンスが理解できるだろうか?人間である私にだって理解できないのにな。相手のためになにかをすること、なにかをされること、難しいなあ。

 

 

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