珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

これこれこういう文体についての覚書|怪文書は拾った

今日のハイライト

バイト中に店内の通路でおっかない怪文書拾って泣いてる

 

まとめブログに載りそう

怪文書と一口に言っても色々ありまして、最近では単に奇妙な文書全般を指して怪文書などと呼んでおりますが、元々は「信憑性及び発行者が不明で出回る事実上の匿名の文書」を指す言葉とのことで、まあそんなことはどうでもいいんですが、今回拾った怪文書が一体どんな怪文だったかというと、ええと、私のブログのような文章です。違いますね。あんまり具体的に書くと怖いのでやめておきますが、でも少しは具体的に書かないと怖さが伝わらないので少しだけ具体的に書きますけど、やっぱり怖いのでやめておきます。私がねらーだったらオカルト板とかに「フリーターだけどバイト中に怪文書拾ったったwwwwwwwwwwwww」ってスレ立てて画像うpとかするんですが、そんな勇気は到底ありません。

 

やっぱり少しだけ具体的に書きます

日本語が滅茶苦茶な時点で既におっかないけど、繰り返される「通報」の二文字と、一部が○で伏字された三つの人名が特におっかない。で、怪文書の作者曰く、彼らは「キカイ」なんだそうです。キカイ?奇怪?機械?最初に拾って読んだときは「キカイ」が「キチ●イ」に見えてギョッとした。いやしかしひょっとするとひょっとしたら「キチ●イ」の書き間違いという可能性もある。拾ってとりあえずポケットに突っ込んでいた怪文書、うっかり家まで持ち帰ってしまった。ズボンを洗濯するためにポケットを漁っていたら出てきた。なんだか既視感がありますね。

shirokuro-044.hatenablog.jp

 

なにが怖いって店内で拾ったってことは客の中にあれを書いた人間がいたってことなんだよなあ

あの怪文書が、純粋に「自分には到底書けない文章」であることに、ある種の感動を覚えている。これは至って無邪気な感動である。たとえ文章教室で「今日はみんなで怪文書を書いてみましょう」と言われても、あんな文章は絶対に書けないだろう。私がどれだけ頭を捻ってウンウン唸っていかにも怪文書らしい文章を練り上げたとしても、天然モノの怪文書には勝てっこないのだ。私が机に向かって書き上げた怪文書なんて、恐らくはどこかで見たことあるような珍妙な文章の寄せ集め、誰かの手になった珍妙な文章の模倣を超えることはあるまい。これこれこういう文体の文章を書こうと意識してこれこれこういう文体の文章を書くことがなかなか難しいように、怪文を書こうと意識して怪文を書くことは難しい。意識していない方が、却って易しいかもしれない。書き手がそれを執拗に追えば追うほど、文体は逃げていく。

 

怪文書3分クッキング

本日は怪文書を作りましょう。まずは頭の中にある記憶の抽斗を全て開け散らかして、あなたがこれまでに見たことのある珍妙な文章のアレとコレとソレを引っ張り出します。これらが基本の材料となります。次に、それらを自分に出来る精一杯の支離滅裂と思いつく限りの滅茶苦茶でじっくり煮込みます。火加減は適当でいいです。灰汁が浮いてきたら、鍋を力いっぱいぐるぐるかき混ぜて何も見なかったことにしましょう。そこに混沌を大さじ1と無秩序を小さじ3、クソ几帳面に計量スプーンで測りとって加え入れてください。ちなみに大さじ1も小さじ3も両方15mlです。5分ほど強火もしくは中火もしくは弱火で煮込んだら、やば味調味料を適量入れます。これは料理にやば味を出してくれます。主成分は多分グルタミン酸ナトリウムとかそんなんです。シアン化ナトリウムだったかもしれません。まあ些細な違いです。あとはあなたの人生の残り時間に応じて0分から∞分ほど煮込んでください。これで怪文書の完成です!ワー!

 

素人が迂闊に手を出すと怪我するもの一覧:「オリジナリティ」「クリエイティブ」「オンリーワン」「アーバンギャルド」「エポックメーキング」

こんな具合で、怪文書レシピの指示通りお利口さんに調理した結果ようやっと出来上がった文章からは、いかにも「冷静な頭でじっくり考えて書きました」といった風の悪臭が立ち上って、とてもじゃないが怪文書としては食えたものじゃあない。先程も言ったとおり、意識しちゃだめなんだよ。怪文書を作ろうと思って意識して作っちゃだめなんだ。予め三徹かなにかしておくしかない。意識が朦朧とした状態に自己を置いておくしかない。自己の意識を他所に置いておくしかない。私は今のところ具体的に「これこれこういう文体の文章が書きたいなあ」と思ったことはないが、もし今後そう考える機会が訪れたならば、私はまず、自己をどこかにこう、よいしょって置いとかねばならぬのだ。これこれこういう文体は、私が意識を持って追いかければ追いかけるほど逃げていくから。私は決して、これこれこういう文体の 模倣・・ がしたいわけじゃないんだから。これこれこういう文体の文章を、私手ずから、書きたいわけだから。

 

 

f:id:shirokuro_044:20220106130150p:plain