落としやすく、諦めやすい覚書｜書いてから気づいたけど受験生にクソ優しくない内容なので読者様の中に受験生の方がいたら合格してからまた読みに来てね

85％くらいの人が見たことありそうなもの

轢かれてぺしゃんこになってるタオル

ﾍﾟｼｬﾝｺｰ

あるある。ありますね。道端で、轢かれてぺしゃんこになってるタオル、ありますね。歩道に落ちてることもあるし、車道の端っこに落ちてることもありますね。圧縮袋に入れられた布団みたいになってるタオル、ジップロックで冷凍保存されたカレーみたいになってるタオル、鞄の底でヨレヨレに折れ曲がったプリントみたいになってるタオル、ありますね。タオルってどうしてああもあちらこちらで轢かれてるんでしょうか。やはりタオルを他の衣料品と比べたときに、落としやすく、諦めやすいってのが大きいんでしょうか。上着なんかを落としたら、だいたいの人はすぐに気づくし、たとえ気づくのが遅れたとしても引き返して拾いに行く。でも鞄に突っ込んだはずのタオル、小脇に抱えていたタオル、首にかけていたタオル、腰に挟んでいたタオル、さっきまで確かに手に持っていたはずのタオル、いつのまにか消えてること、ありますね。それで、まあタオルくらいなら……って簡単に諦めちゃうこと、ありますね。

時間軸の左側は人間の落とし物で溢れかえっている

落としやすく、諦めやすいもの、私もいくつか知っているような気がしますよ。ええと、まず、ノリで履修した選択科目の単位とか。私は大学生の頃にノリでラテン語を履修したことがありますが、毎週のテストがキツかったのと、教授が厳しくて1秒でも遅刻したらもうその日の講義を受けさせてもらえないにも関わらず、ラテン語の前の講義が少し離れた隣のキャンパスで行われる実習で、あっこれ単位獲得どころか出席すらマトモにできないやつやと思ってあっさり諦めました。まさに落としやすく、諦めやすいものですね。他には、ええと、レシートですね。レシート。あいつら、すぐ鞄からヒラヒラ落っこちて、行方不明になります。とはいえ落として惜しいものでもなし、諦めやすさで言えばタオルよりずっと上です。あとは、そうだな……仕事用のスリッパに油性ペンで書いた名前なんかもそうです。履いてるうちにすぐ落ちるんですね。でも落ちたらまた書けばいいだけの話、落ちた分の名前については簡単に諦められるでしょう。たとえ諦めっぱなしにしていたところで、自分以外の人間のスリッパにきちんと名前が残っているのなら、何も問題はないわけです。

一理ある

ところでこの「落としやすい」というのは、短所でしょうか？長所でしょうか？先程の単位もそうですが、例えば「落としやすいピアス」「落としやすい定期入れ」「落としやすい命」といった場合は、明らかに短所ですね。でも「落としやすい汚れ」「落としやすい経費」「落としやすいだるま」なんかは、長所に数えていいでしょう。まあ、どっちもアリってことで。じゃあ、「諦めやすい」というのは、短所でしょうか？長所でしょうか？ウーン。ウーン？「諦めやすいタオル」「諦めやすい単位」「諦めやすいレシート」「諦めやすい仕事用のスリッパに油性ペンで書いた名前」……これらは、悪いことなんでしょうか？いいことなんでしょうか？私には分かりません。悪い気もするし、いい気もする。私が諦める側ならむしろ助かる気がするというかむしろ助かる気しかしないのですが、人によっては、諦めやすいこれらが憎たらしいことだってあるでしょう。「こいつらが諦めにくいものであったならば、そもそも私はこいつらのことを落としたりなんかしなかったのに！」……こんな風にね。

落ちるときは落ちるもんだ

イヤイヤ待ってくださいよ、いくら諦めにくいものだったとしても、人間、落とすときは落としますよ。100万のタオルと100円のタオル、諦めにくさならば前者のほうが圧倒的に上ですが、それでも落とすときは落とすでしょうよ。それともアレですか、あなたはタオルにリードでもつけておくつもりですか？あらかじめ鞄に縫い付けておくつもりですか？もしくはその100万のタオルを金庫にしまって、金庫ごと持ち歩きますか？それでも落とすときは落とすでしょうよ。リードが切れるかもしれないし、縫い目が解けるかもしれないし、金庫ごと道端に落とすかもしれない。人間、重力と風にはそうそう勝てないんです。でも大丈夫！100万のタオルを落としてしまって悔しい思いをしたのなら、次は200万のタオルを買いましょう！そしてボディーガードを前後左右に4人雇って、タオルが絶対に落ちないよう見張っていてもらいましょう！そうすればきっと落とさない！あのタオルには、札束2冊分の価値が有るのだから！そうでしょう？