比較的無害な形容詞への信頼が厚い覚書｜形容詞ですら人間に優しくできるというのに人間ときたら
なにしろ「暑い」で頭の中がいっぱいなものだからバッグに入れている扇子を取り出して使うという考えに至る余地すらないんだよな
暑い……あまりにも暑い……もう暑いということしか考えられない……頭の中が暑いでいっぱいになっている……いつもこんなふうに自分にはどうにも出来ないことで頭の中がいっぱいだったらいいのに……そしたらきっと余計なことなんかなにも考えずに済むのに……出来れば「暑い」以外の何かで……「明るい」とか「暗い」とか「白い」とか「黒い」とかそういう比較的無害な形容詞で頭の中がいっぱいになっていればいいのに……
比較的無害な形容詞体験VR
自分がどうにかすればどうにかなるかもしれないしならないかもしれないような事柄で頭の中をいっぱいにするから人間ヘンになるんだ。もっと自分にはどうにも出来ないことで頭の中をいっぱいにしよう。比較的無害な形容詞で頭の中をいっぱいにしよう。今の時期なら最適なのは「涼しい」だね。「涼しい」で頭の中をいっぱいに出来たら最高だね。気温は35度くらいあっておひさまガンガン照りつけてるのに頭の中が「涼しい」でいっぱいだったらそんなに素晴らしいこともないな。問題があるとすれば、頭の中が「涼しい」でいっぱいであるが故に自分でも気づかないうちに熱中症でぶっ倒れる危険性があるということだな。気づいたら病院のベッドの上で本物の「涼しい」を満喫していた、なんて洒落になりませんから。ただそれも定期的に水を飲むとか塩分を摂るとかそこだけキッチリ意識しておけばどうとでもなるわけで。ハァー、頭の中を「涼しい」でいっぱいにして、それ以外の労働とか、掃除とか、洗濯とか、そういうことを全部押しのけられたらいいのになあ。
「暗い」は無害です 彼らは誰よりも穏やかなので
とはいえ、たったひとつの比較的無害な形容詞で頭の中をいっぱいにしておくことは大変難しい。「涼しい」だけを感じようと思い、ただただ涼しいばかりでそれ以外何もない部屋にいたとしても、壁の色が白かったら「白い」も紛れ込んでくるし、目を閉じれば「暗い」「黒い」が入り込んでくる。きっとそのうち「眠い」とか「寂しい」とかそういう無害とは言い難い形容詞も押し寄せてくるだろう。別にそれがダメってわけじゃあないんだが、やっぱりそうなるとこう、段々意識が散漫になってくる。そのうち労働とか家事とか余計な連中がひょっこり顔を出し始めることだろう。ウーン。難しいなあ。たったひとつの比較的無害な形容詞で頭の中をいっぱいにしておくことはとっても難しいなあ。その一方で、無数の有害な名詞形容詞形容動詞動詞で頭の中をいっぱいにしておくことは、どうしてこれほど簡単なのだろう。それもまた、むずかしいなあ。
筆が止まったので有益な情報を掲載してお茶を濁す
ブドウ糖入れて濁せ
なんやろなあ
ほかの人たちの頭の中には一体どのような形容詞がいっぱい詰まっているのかな？そんなの時と場合によるでしょというのはまったくもってご尤もなのであるが。「あー自分は油断するとすぐこの形容詞で頭の中がいっぱいになるんだよなあ」ってものがひとつくらいありません？私はわりとすぐに思い浮かびますね。今は夏だからすぐに「暑い」で頭の中がいっぱいになりますけど、私にはそれ以外にオールシーズンこれ！！！って形容詞がひとつありますね。さて一体なんでしょう。皆さん当ててみてください。
