珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

本読みvs良書についての覚書|6月は梅雨時で本が読めるぞ~本が読める読めるぞ~本が読めるぞ~

(※7月です)

梅雨はばかもの やうやう青白(しろ)くなりゆく顔色

紫陽花の見える窓辺に腰掛け、適当に淹れたコーヒーを啜る片手間、適当に見繕った本の頁をぼんやり繰りながら、徒らに時を過ごしていたいそんな良き梅雨の日に、偏頭痛が酷すぎてゲロを吐くという失態を犯した白黒れむです。白黒ははぐろって読みます。数時間前に食べたポテトチップスがわりとそのまま出てびっくりした。まあ、梅雨だろうが秋だろうがとにもかくにも家から出ない私にとって、「読書の季節」など有って無いものだ。一応、梅雨時や紅葉の季節と読書の親和性は認めよう。しかしそういうのって大体、「梅雨に本を読むことが好き」というよりも、「梅雨にアンニュイな気分で本読んでる自分が好き」なだけじゃないかね!ガハハ!(ここで防護服を着る)

 

本読みて 視野狭くなる

熱心にプラトンの著作を読む傍ら、隙あらば(というよりもどさくさに紛れて)哲学をけちょんけちょんにしたがるカール・ヒルティ「眠られぬ夜のために」を読んでいて思ったことがある。を読みながら、それと相対する性質の、あるいは赤をけちょんけちょんにするような性質のなんぞを一緒に読むことは、視野を狭くしないという点で実に良い読書法だ。「一番いいのはサラリーマン」と「サラリーマンなんか今すぐやめなさい」という本の著者が同一人物であることは(ネタとして)わりと有名だが、まあそういった類の本を同時に読むのだ。コーヒーはいいぞという趣旨の本を読むのであれば、紅茶はいいぞという趣旨の本か、コーヒーはよくないぞという趣旨の本を一緒に読む。視野を広くするための読書行為が、知らず知らずのうちに視野の固定化を招いているというのは、珍しい話でもないと思う。相反する2冊の本を同時に用意出来ないのであれば、1冊の本を読んだ後に、その本に向かって一度「うるせえ!!!」と反抗してみるのが良かろう。あなた自身が相反するものになるのだ。

 

良書なんかに負けないんだから

今の世の中、人がどんな本を読んで、どんな思想に染まるも自由である。しかしそんな世の中だからこそ、敢えて良書に対抗する力も必要だと思う。人が本を呑むのは良いが、真の本読みを目指すのであれば、決して本に呑まれてはならない。先日の記事で、「100冊読んで1冊良きものを得るくらいで充分」などと語っていたのもこの辺に関係してのことだ。誤解を恐れずに言うならば、良い本は悪い本よりタチが悪い。悪い本は読んだ人間に自然ある種の警戒心を抱かせるのに対して、良い本は ドキュメンタリーの類だと思って見ていたら最後の方で悔しい思いをする青汁のCMのごとく 腕の立つセールスマンや口のうまい勧誘員のごとくスルスルとこちらの心に入ってきて、いつの間にか多くの人間を、いとも簡単に呑み込んでしまうからである。通常人と本の間に立ちはだかっているかの番人――検討・疑問・考察・批判といった連中――の横をあっさりすり抜けて、あたかもぬいぐるみに麻袋を被せるがごとく無抵抗の人間を丸呑みにし、自分の配下に入れることが可能なのだ。人は良書を己の人生の糧のように考えているようだが、むしろ良書が誰かの人生を糧として生きていると考え、ありったけの警戒心を持って奴らに取り組んだほうがいい。日頃から本を食ってやろうと考えている貪欲な人ほど本に喰われていることに気がつかないものだ。本に喰われてはならない。それにほら、思い返してみれば、何より人は書評を書くではないか。書評を書くというのは、アレだ、ミツバチが花粉を運ぶようなものだ。我々はミツバチだ。これ以上は言う必要あるまい。

 

サウスパーク見てたら神に喧嘩売るくらいなによって思えるからすごい

カール・ヒルティ「眠られぬ夜のために」は、簡潔に言えば、聖書を母体に人の善き生き方について読者に諭すタイプの、そういう本である。私はキリスト教の信仰者ではないが、これを毎晩枕元に置いて寝てもいいくらいには救いに満ち溢れた本だと思う。ただ率直に言って、これは仕方のないことなのだが、「科学より信仰!」「医学より神の愛!」「耐えなさい!忍びなさい!我慢なさい!」みたいな部分とはやはり相容れないなと感じる。どうして神様は今まさに苦しんでいる人間を今まさに救ってくださらないんでしょう。まあなんだ、結局、人は自分を救ってくださる らしい・・・ ものを造るのが得意なのだ。それを医療だと思った人がいたから医学が発展したわけだし、一方ではそれを神様だと思った人がいたから宗教が発展したのだ。――こうしてヒルティにも神様にもしこたま喧嘩を売ったことで、この素晴らしき名著に喰われまいという私の試みは、見事成功したのである。

 

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