珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

アクとワルについての覚書|悪を欲しているのは誰か

売上と引き換えに得た平和

悪(アク)に対立するものが正義だとしたら、悪(ワル)に対立するものは一体何であろうか。また、不良に対立するものは一体何であろうか。誠実、真面目、よい子、委員長……中立や無関心よりは重く、正義よりは軽いものが当てはまるのだろう。多くの人が寝静まったド夜に繁華街で働いている身なので、ワルや不良は割と身近な存在というか、コロナ前であれば日常茶飯事であった。思えば、コロナが流行して客が激減してからは1度も通報してない。つまり、数ヶ月警察のお世話になっていない。すごい。私は今のバイト先で働き始めた初日に白黒さん警察呼んでと言われて110番した女なので、これは本当にすごいことである。盗難、従業員への恐喝、暴行未遂、器物損壊、食い逃げ、指名手配犯のご来店、エトセトラエトセトラ……これらが何ひとつ起こっていないということだ。すごい!平和!

 

独断と偏見ですが

「この世はアク で満ちている」と大声で叫んでやりたいのは山々だが、少しばかり冷静で理性のある私なら、「この世にはワル が散らかっている」くらいで我慢してくれるはずだ。実際、少なくとも、現代日本で平凡に生きている一般市民が見ている世界には、アク なんてそうゴロゴロと転がっているものではない。ニュースをつければそれらしきものは沢山見られるかもしれないが、真の意味でアク と呼べるものはその中でも一部に限られていると思う。ところで私は一体何を基準にアクだのワルだのと使い分けているかについてまだ述べていなかった。あくまで私の中での基準ということをご承知頂きたいのだが、例えば「勤務歴20年のベテランがある日誘惑に負けて客から預かった金を着服した」というのは私的にはワル だ。ではこれがアク なら一体どうなるかというと、「初めから客の金を着服するつもりで会社に入り客の金を着服することを考えながら働きある日予定通り客の金を着服してトンズラした」。大分極端だが、これは誰の目から見てもアク だろう。しかしこの2つをニュースで見た場合、恐らく我々には同じような内容で報道されるだろうし、後者のアク たる人間が「つい魔が差したんです、計画性はありません」と言ってしまえば、それは結局ワル としか映らないのだ。実際、犯した罪がどれほどの悪意を以て行われたかについて、他人がピシャリ正確に知る方法なんて無い。あくまで諸々の発言などから推し量るしかないのだ。それでもいつかはきっと、アクワルを同じ秤で量っていられなくなる日が来ると思う。皿に乗せられたアクが天秤を傾けた分だけ、決してそれより多くでも少なくでもなく、誰に対してもちょうどその分だけ、償うものが重くなってほしい。

 

言いようのない不気味さについて

昨晩は「この世からアクもワルも含めたあらゆる悪が無くなったらどうなるだろう」ということについて考えていた。まず思い浮かんだのが、警備員という仕事が無くなるだろうということだ。たまたま警備員を見かけたのでそう思った。警備員が必要なのはこの世に悪い人間がいるからであって、もしそれらが絶滅したならば警備員は一体何から我々を警備するというのか。たまに2人組でどっかのお金を運んでいる武装(?)した警備会社の人を見かけるが、ああいうこともしなくていい。金を店から出す必要があるならば、なんか牛乳配達ボックスみたいなのに入れて外に出しておけば、適当に担当者のおじさんが持って行ってくれるだろう。店先に置かれた大金を盗むような人はこの世にいないのだから。ゴミと間違えて捨てられないようにということだけ気をつければいい。いっそのこと従業員自身が金をリュックにでもに詰めて本社までえっちらおっちら歩いていけばいい。襲う通行人もいなければ、盗む従業員もいない。リュックの耐久と強風と交通事故にだけ気をつければいい。

これは……平和なんだろうか?

 

悪と闘ってくれてありがとう

 あらゆる悪が存在しない世の中について厳密に想像しようと思ったら、我々の生活を構成するありとあらゆるあれこれ(ふんわり)の存在から疑ってかからないといけないので、相当に骨の折れる仕事になる。法律の1つ1つについて見ていかなくてはいけないだろうし、社会も、経済も、職業も、常識も……とにかく何でもだ。我々の世界に金庫があるのは何故か?盗む人がいるからである。盗む人がいなければ、金庫なんか必要ない。そうなると金庫を作る会社はなくなる。金庫を作るのに必要な諸々の素材を提供している会社にも影響が出る。悪の存在が前提となっている物事、それが前提となっている物事、更にそれが前提となっている物事、何でも見直さなければならない。悪は大昔から我々の暮らしに浸透しきっていて、最早「悪なしでは生きられない世界」と言っても過言ではない。盗む人がいるから、人は盗まれないためのハイテクな仕組みを作り上げてきたのだ。人をナイフで傷つける人がいるから、ナイフでつけられた傷をより上手く治療する方法が考え出されたのだ。これ以上言うと背筋がゾッするので止めておこう。今この瞬間も悪と闘っている勇敢な人々の存在を、無かったことにしてはならない。

 

ところで

体調の悪、心身の悪、あいつらは何を以て更正させてやればいいのだろう。あいつらこそが真のアクだ。ちくしょうめ。

 

 

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