他人に思考されるという一種の辱めについての覚書｜人に忘れられて初めて生き返りそうな人間の申すこと

風速40m/sで息を吹き返す

無意味なものに意味を求めるという行為は、行為それ自体が無意味であるから、無意味を内包した無意味という点でよりいっそう、さらにますます無意味である。無意味にも意味を求められた無意味は無限に無意味の皮で内包される。それともなんだ、無意味なものに意味を求める行為それ自体は無意味ではなく、何かしら意味あるものであって、意味のあるものに内包された無意味は意味あるものの一要素として、意味のある無意味に変化するとでもいうのだろうか。あー、ウン。それはそれでちょっとアリかもしれない。その理論で行くと、無意味なものはその存在においてはまさしく無意味そのものであるが、それが思考の対象になった瞬間に息、もとい意味を吹き返すのだ。いいなあ。私も生きている間に意味を吹き返して、吹き返した意味、もとい息によって、この世の全てを吹き飛ばしてやるくらいの気概を見せたいものだ。

いやあ逆転マジックミラー号は傑作でしたね

私は私という存在においてはまさしく無意味そのものであるが、私が私に思考された瞬間、私は意味を吹き返すのだ。息をしてない自分の身体、その青褪めた唇にかぶりついて、フーフー息を吹き込んでやるのはいつだって自分の仕事だ。もちろん私は他人から思考してもらうことも出来るが、そんな、ねえ、他人から思考されるだなんて恥ずかしい。それなんて、ほら、例えるならこう、大勢のおじさんの前に丸裸の女の子が連れて来られてじろじろ吟味されるエッチなビデオみたいな……ああいやこれはあくまでも例えであって……でも他人から思考されるというのは、そういうことだろう。他人から自分のことを思考されるなんて、そんな羞恥に私は耐えられない。それなら鏡の前に立って、自分のだらしないすっぽんぽんを上から下まで延々眺めていた方がまだ恥ずかしくない。大いに情けなくはあるだろうが。私に限らず、多くの凡人にあっては他人に自分を思考される羞恥に耐え切れず、自分で自分を思考せざるを得ないだろう。こうして凡人は、鏡に映る己の裸体、己の無意味さをじろじろ眺めながら、やるせない気持ちと共に一抹の意味を見出していくのだ。己が全く無意味なままであっても生存は出来るが、生活は出来ないからね。生活していくには、意味が必要なのだ。

24時間思考される強さ

出世した人というとなんだか語弊があるが、世の中で名の知られた度胸家・・・の人々の多くは、他人に思考されることに耐え得る人々なのだろう。大雑把に言えば、芸能人とか。私は、私が寝ている時に、他人から思考の対象にされることに耐えられない。私は特に好きな芸能人がいないので例を挙げづらいが、仮に好きな芸能人Xがいたとして、その芸能人Xが東京のどこかの高級マンションで寝ている時に、遠く離れたド田舎から、「ハァー、X、すき」とか考えたりする。思考する側は、実に気楽である。一方私は、自分が参加しなかったバイト先の飲み会で、万が一自分の話題が出ていたらどうしようと考えるだけでもウワーッとなる人間なのだ。それで、参加した誰かから私のことが話題に上がったようなことを仄めかされるだけでも気を失いそうになる。それは……褒められているのか？馬鹿にされているのか？悪口を言われているのか？フリーターの分際で偉そうにとか就職しろカスとか言われてそうだな？ウワーッ！他人から思考されるくらいなら、私は無意味な人間のままでいたい！自分で自分のことも思考しない！無意味な人間として生存していきたい！「emeth(真理)」を刻まれぬままただそこに在るだけのゴーレムの素体のように！ウワーッ！

それいつものことですよね

ちょっと論点が飛びすぎというかトバしすぎというか、思いっきり大股開いて目標地点を踏んだはいいが股を開きすぎて脚を戻せなくなった人間みたいになってるな。自己が自己を自己として認識できる機能は、例え自分以外の全人類から思考されなくなったとしても、自分が自分のことを思考出来るなら辛うじて意味を保持出来るという点で、天から与えられたお情けみたいなものだ。他人からの思考でしか自己を保持出来ないのなら、私なんかどっかの地点でとっくの昔に霧消している。いや霧消はしないか。戸籍が残ってるものな。戸籍が、他人の代わりに私を影から思考してくれてるんだ。イイやつだよ、アイツは。しかし全人類から思考されないような人間に、「自」と「他」を区別する能力は残っているのか？人は他者から思考されて初めて「自」と「他」をセットで手に入れるのではないのか？「他」が無ければそこに「自」もないだろう？地球上に「海」が無ければ「陸」をわざわざ「陸」と呼ぶ必要もないのだ。なに言ってんだ？今日は週の1発目だってのにいろいろあってストレスの甕が早くも満杯になったから頭がおかしくなってるんでしょう。ウーン。