珈琲三杯|思索のための思索

限界フリーターが毎日の思索を書き綴る。手帖の代わり、或いはゴミ箱。

お世話についての覚書|謎の生き物でさえ人間界で労働できるんだから人間が人間界で労働できないわけがないんだ!よーし!がんばるぞー!

ゲームアプリの広告動画を眺めていた。謎の生き物(かわいい)を育成するお世話ゲーで、広告にしてはなかなか興味深く癒されながら視聴させていただいたのだが、「お世話をしてくれたお礼にバイトをしてお金を稼いでくれるよ!」でもうダメだった。謎の生き物(かわいい)、バイトするのかよ。ゲームシステムの説明によれば、プレイヤーが謎の生き物(かわいい)をお世話すると、そのお礼に謎の生き物(かわいい)がコンビニでバイトをして、そのお金をプレイヤーに貢いでくれるらしい。広告の中では実際、謎の生き物(かわいい)がコンビニの制服を着てレジ打ちをしていた。こんなんわろてまうやろ。もっとこう、謎の生き物(かわいい)らしく、お花を出してくれるとか、キャンディを出してくれるとか、そういうのじゃないのかよ。お前が働くのかよ。コンビニで。

 

お前実はめちゃくちゃ頭いいだろ

謎の生き物(かわいい)が、あんな気の抜けた顔して人間界の仕組みを理解しすぎるほど理解していたのが本当によかった。そうなんだよ。きれいなお花やおいしいキャンディじゃあ、人は生活できないんだよ。お金がなくちゃ。お金もどこからともなく湧いてくるわけじゃあないんだよ。働かなくちゃ。ゲームにおける労働の仕組みはよくわからんが、あんな気の抜けた顔して履歴書書いて、面接行って、採用されて、研修受けて、バイトしてんのかな。お前……お前ね、自分でそこまでできるなら、自分で自分のことをお世話したらいいんじゃないかな。コンビニでバイトができるなら、お前はもう立派にひとりでやっていけるんじゃないかな。謎の生き物(かわいい)は、どうして人間なんかにお世話されているんだろう。趣味?それなら仕方ないね。

 

ギエピー!

世の中、自分で自分のお世話を立派に果たせる能力があるにも関わらず、お金を払ってでも人にお世話をされたい生き物がいるんだな。今の私はどちらかといえば、お金を払ってでも人にお世話をされたくない生き物に属していると思う。この場合の「お世話」が何を指すのかによって話が大きく変わるのでおよそ一口には言えないが、お世話してほしいかって訊かれたら、してほしくないですって答える。ウン。お世話されたくない理由、今まで単純に「お世話されるのが好きじゃないから」だと思っていたけれど、ひょっとすると、他人のお世話をしたくないという本音の裏返しなのかもしれないなあと最近思っている。これは裏返っていると言えるのかな?「ギエピー!バイト先の人間の入れ替わりがいくらなんでも激しすぎるッピ!やっと一人前と思った次の瞬間にはもういなくなってるッピ!また一から新人教育だッピ!もう他人のお世話したくないッピ!オアー!」っていう本音の、表れ。

 

不敬ですよ!

私はバイト先に労働をしに来ているのか、それとも従業員のお世話をしに来ているのか、どっちか分からなくなるくらいには新人教育ばかりしている。新人教育も仕事のうちだからもちろん真面目にやるけど、私、他人のお世話するの上手くないんですよ。なんかこう、どのくらいの加減で他人を扱ったらいいのか分からなくて。優しくしすぎてもいけないと思うし、かといって厳しくしすぎるのもいけないと思うし、そもそも他人に優しくする方法も厳しくする方法もよく分からないんです。指示しないのもよくないけど指示しすぎるのもよくないとか、任せないのもよくないけど任せすぎるのもよくないとか、教えるべきことを教えないのもよくないけど一度に教えすぎるのもよくないとか、余計なことをアレコレ考えた挙句に、いちばんひどい悪手を打ったりしている。よくよく考えたら私、他人をお世話する方法なんてこれっぽっちも知らないな。知らないのに他人をお世話してたのか。キリストのことをこれっぽっちも知らないのに当日駅前の本屋で買った聖書引っさげて説教にやってきた牧師みたいだな。地獄に落ちそう。

 

感謝しかなくて、感謝しかない

部活やサークル活動の経験がロクにないからとか、ひとりっ子だからとか、活発に遊ぶタイプじゃなかったからとか、子供や高齢者の面倒を見たことがないからとか、言い訳ならいくらでも思いつく。ひとりっ子なのはまあどうしようもないとしても、これまで他人をお世話するような環境に身を置いてこなかったのはまごう事なき自分の責任である。一応私だって、他人からいっぱいお世話されて育ってきたはずなのに、私は一体彼らのなにを見てきたんだ?彼らからなにを学んだんだ?なんにも学んでないじゃないか。お世話される人間は、お世話をしてくれる人間から多少なりともなにかを学ぶものだ。いいことも、悪いことも。彼らはどのようにして私をお世話してくれた?分からない。今となってはただ、中身のない、干からびた、形だけの、まるで役に立たない、感謝の抜け殻がそこにあるだけ。感謝の気持ちはある。感謝の気持ちしかない。感謝の気持ちしか思い出せない。感謝の気持ち以外のものが、なにも思い出せない。

 

もうしてる

そんなわけで、例のお世話ゲームをインストールして、他人のお世話をすることのなんたるかを学ぼうと思ったら、容量がいっぱいでインストールできなかった。ええ。これも日頃からスマホのお世話をしてこなかったせいだ。入れているアプリの数自体はそんなに多くないはず。ただ画像データがアホみたいに容量を圧迫している。もうだめだ。自分のスマホのお世話もできないのに他人のお世話なんかできるわけないんだ。ああ。もうだめだ。誰かこんなだめな私のお世話をしてくれ。お世話されたくないとか嘘です。お世話されたいです。お世話してください。お金なら払います。コンビニでバイトとかします。

 

 

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