1枚の匿名パンツから考える共感性羞恥についての覚書｜ぱんぱかパンツ

近所のアパートの前にパンツ落ちてた

なんだか見てはいけないものを見てしまった気分

高校生くらいまでパンツって口に出して言うの恥ずかしかった

風が吹けばパンツも落ちる。古事記にもそう書いてある。しかしこう……なんだろうな。てくてく歩く私。何かが道に落ちていることに気づく私。それがパンツであることを認識する私。反射的に目を逸らす私。親と一緒に見ていたドラマがラブシーンに入ったときみたいな居た堪れなさがある。会話をしている相手のズボンのチャックが全開だったときみたいな居た堪れなさ。先生が前回の授業でやった教科書のページと全く同じところを1から解説し始めてクラス中が「あれ？ここ前回やったよね？」って空気になってるけど誰も指摘しないときみたいな居た堪れなさ。パンツに顔写真が付いているわけでもなし、パンツに名前が書いてあるわけでもなし、いやひょっとしたら書いてあったかもしれないけど、言うなれば匿名のパンツであって、そういう意味ではコンビニで売ってあるパンツとそう大差ないはずだ。しかし同じ匿名のパンツであっても「誰のものでもないパンツ」と「誰かのパンツ」は全然違う。誰のものでもない売り物のパンツがコンビニを飛び出してそこらへんで力尽きているのと、誰かのパンツが風に吹かれてそこらへんで力尽きているのとじゃあ、居た堪れなさが全然違う。誰かのパンツの運命やいかに。

ひとり焼肉、ひとりディズニーランド、ひとりパンツ回収

道端に落ちたパンツってほんとどうなるんやろなあ。パンツの持ち主は気づくんだろうか。洗濯物を取り込むときに「あれ？あのパンツがない」ってなるんだろうか。あるいは道端に落ちている実物を見て「あっ！俺のパンツ！」ってなるんだろうか。仮に後者だとしたら、その場で回収する？しない？ウーン。みなさんどうです？自分のパンツが風に飛ばされてそこそこ人の通る道に落っこちてて、それを帰宅時にたまたま見つけたとして、その場で回収します？ウーン。道端に落ちたパンツの回収って難易度高くないですか？住んでるアパートの駐車場ならともかく、アパートに面した歩道ですよ？ウーン。パンツもそうだけど、道端に落ちてる衣類やタオルって誰が回収してるんだろう。たまに親切な人が手ごろなナニカに引っ掛けてくれていることがあるけど、それも時間が経つと無くなってるじゃないですか。アレは一体どこへ行ってるの？風に吹かれてどこかへ行くの？それとも親切な近所の人とかなんかそのへん掃除してる人とかが捨ててくれたりするの？

shirokuro-044.hatenablog.jp

共感性共感性羞恥

恥をかいている人を見て自分まで恥ずかしくなることを、世間ではキョーカンセーシューチと言う。わかる。共感性羞恥に共感がある。それにしても、恥をかいている人を見てから何故か自分まで羞恥を感じだすのにかかる時間の短さ、アレすごくないですか。1秒もないんじゃないかな。ああいうのって、「あれがもしも自分だったらどんな気持ちがするか考えてみよう、ムムム、ムムム、ハイ、彼を自分に置き換えて具体的に想像してみた結果ですが、恐らくは私も強い羞恥を覚えるであろうことが予想されます」なんてまどろっこしいプロセスをいちいち経由しないじゃないですか。パッと見て、何かを考える暇もなく即座に「ウワ！自分は当事者じゃないのにあたかも当事者であるかのように恥ずかしい！」ってなるじゃないですか。輪郭のない、漠然とした、それでいて強烈な羞恥がやって来るのが先で、自分に置き換えて具体的に想像してみるってのはむしろその後に遅れて来るか、人によってはやって来さえしない現象じゃないですか。人間の脳みそってよく出来てるなあ。あの能力は一体何と呼べばいいんだろう。共感性羞恥を覚えた時点ではまだハッキリと想像してないんだから、想像力とはまた違う。共感力？共感力でいいですか？共感性羞恥っていうくらいだもんな。ところで共感ってナニ？共感性羞恥が発現しているときと同じくらい圧倒的優秀な共感力が常日頃から人間に発揮されていたら……イヤそれはそれで色々まずいな。死にたがっている人を見てたら急に自分まで死にたくなっちゃったなとか、そうなったらよろしくないもんな。

どうして羞恥にだけ特別に「共感性羞恥」なる現象名が与えられているんだろう　

ね。「共感性羞恥」があるなら「共感性焦燥」とか「共感性緊張」とか「共感性疼痛」そういう言葉もあっていいはずだけど身近では聞いたことがない。私が聞いたことないだけで実際には存在するのかもしれない。まあそんな現象のひとつひとつにいちいち名前を付けていたらキリがないとは思う。「共感」で一括りにすればそれで事足りるんだから。でもその中で羞恥だけは特別枠なんですね。ナニがとは言わないけど羞恥モノってひとつのジャンルがあるくらいだしね。焦燥モノとか緊張モノとか聞いたことない。