おいしいパンとおいしそうなパンとおいしくなさそうなパンについての覚書｜三味一体
オレがサイコロを先に振る
スーパーやコンビニのパン売り場に行くと、お気に入りの「おいしいパン」を買うか、新作の「おいしそうなパン」を買うかで延々悩んでしまう。マジで決められない。「おいしいパン」はおいしいと分かっているのだからこれを買えば間違いはない。しかし「おいしそうなパン」もまた実に興味をそそる。私はトマトチーズパンを買いに来たはずなのにどうして安納芋蒸しパンを手に取っているんだろう。今の気分で言えば間違いなく惣菜パンの気分だ。菓子パンの気分ではない。でも私は安納芋の名を冠した期間限定品にすこぶる弱い。しかも蒸しパン。最強の組み合わせだ。おいしいトマトチーズパン。おいしそうな安納芋蒸しパン。ここはひとつダイスロールで決めようじゃないか。1・3・5が出ればおいしいトマトチーズパン、2・4・6が出ればおいしそうな安納芋蒸しパンだ！それっ！
そういうのいいから
はい
人生における食事回数に比べて世の中にパンの種類が多すぎる
いやしかし実際、悩みません？「おいしいパン」と「おいしそうなパン」どっちを買うかって。店に入ってきてものの5秒くらいで買うパンを決めてさっさと会計しに来る客を見るたびに尊敬してしまう。悩まない。迷わない。躊躇わない。決断力がある。私にはあんなパンの選び方できそうもない。ウンウン唸って悩みに悩み、仕事帰りの少ない気力をチューブから搾り取るようにして選択したパンを家でほおばっているときの感想といえば、結局「ウン、おいしい」の一択である。「おいしいパン」を買おうが「おいしそうなパン」を買おうが、結局おいしいことに変わりはないのだ。店に売ってるパンは、大概おいしいようにできている。どれだけ遠回りしようと目的地は毎回同じ。これじゃあの苦悩も浮かばれない。毎日のパン如き、さっさと決めてしまった方が体力にも気力にも場合によってはお財布にもやさしいのである。次からそうしましょう。パン即決チャレンジ。
パンの大神
その一方、自分じゃ絶対買わないだろうというパンを人から貰って、気乗りせぬままに食ってみたら存外おいしく満足したという経験はわりとある。「おいしくなさそうなパン」ですら実際にはおいしいのだから、「おいしいパン」がおいしいのは確定事項として、「おいしそうなパン」がおいしいのも最早必然ではないか。すなわち、「おいしいパン」を買おうが「おいしそうなパン」を買おうが「おいしくなさそうなパン」を買おうが、結局おいしいことに変わりはないのだ。なんなら目を瞑って買ってもいい。ダーツを投げて決めたっていい。いやダーツを投げると店員さんに怒られるからその場でサイコロを振って決めよう。そのための100面ダイスだ。私の代わりに100面ダイスが今日のパンを決めてくれる。そうすると私はもう、頭抱えて悩まなくてもいいわけですね！？選択のために苦悩する必要はないということですね！？選択のために苦悩しなくていいってサイコー！神に感謝！
そういえば過去にも同じような話題について書いていたけど
この人どれだけ選択したくないんでしょう。己の優柔不断が生んだ苦悩を選択そのものに転嫁して、選択そのものを悪と見做し、選択なんてものがこの世に存在するから私はこんなに悩み苦しんでるんだぞとでも言いたげな文章ですね。現代には数え切れない程の選択の自由がある。選択の自由。選択の自由は、私のような行き過ぎた優柔不断者にとっては、半ば不自由に等しいようだ。選択の自由は不自由。私はあとなんべん選択を強いられるんだろう？考えるだけでも恐ろしい。ただ、今回この記事を書いたことで、一応パン選びの苦痛からは解放されたわけだ。なるほどこのようにして、世の中に存在するあらゆる選択の自由から、自分自身をひとつひとつ解放してやればいいのか。そうすることで私は選択の自由という巨神兵から完全に逃げおおせ、「選択の自由のない自由」という真に完璧な自由を手に入れるのだ。やったね！
今日はセブンイレブンのメロンパンアソートを買いました(おいしかった)
当方、ハチャメチャに優柔不断な性格の被験体が欲しい心理学者の方や心理学専攻の学生さんからのオファーを常にお待ちしております。報酬は、そうですね、私が今日食べるためのパンを私の代わりに決めていただければそれで結構です。おいしいコーヒーがあるとなお嬉しいです。よろしくお願いします。
